旅の空でいつか

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最初の別れ /Z

  1. 2010/03/02(火) 23:53:49|
  2. ★完結★ 『アルファベットの旅人』シリーズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6

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なんだか、いつもと様子が違う。
ハッキリとそう感じたのは、もう、何回も前の夜。

あの「明るい場所」に連れて行かれる回数が減って、
連れて行かれても、そこにいる男の人たちの数も少なくて。

ロウバンたちの様子も、少しずつ変わっていった。


そこに連れて行かれる回数が減ってから、
当然、あの、
たくさんの食事を与えられる日も減っていった。

最近はひどく寒い日が続いていたから、
寒くて、寒くて、寒くて。
すごく、お腹もすいていて。
本当に、今度こそ本当に、もうダメかもしれないなって思った。

それでもなんとか、また、その日は来て。

そして、あの「明るい場所」に連れて行かれた。

本当に、ギリギリで。

……そしてそれが、最後だったんだ。


その日の様子も、やっぱり、それまでは違っていた。
その日は特に、そこにいる男たちの数が少なかった。

そして、その男がいた。


そこに集まる男たちの顔は、実はいつも、そんなには変わらないんだ。
それが、それまでの「その場所」だった。

けれどその日は、今まではみたことのない男たちが、そこにいた。
一目でわかったんだ。
あの人は違う。って。

その男は、まわりにたくさんの黒服の男たちを従えていて、
座る姿も、誰よりも堂々としていた。
ロウバンたちの態度も、その男には特別丁寧だった。

そして、その日、変化が起きた。


「そいつを買おう。」


ロウバンが少しだけ驚いて、それから笑顔で、
その男に、何度か「値段」の確認をして。

そうして連れて行かれたのは、
『A』。


ビカビカのライトに当てられて、
『A』の髪も光るようで。


知っていた。
「買われた」ら、もう、その子はここには戻ってこない。

「買われた」子どもたちがどうなるのか、
それはわからなかったけれど、でも、
もう、戻ってこないこと。
きっともう、会えないこと。
それだけは、わかっていたから。


『A』がひとり、並べられた鎖から外されて。
それから『A』をつなぐ鎖は、その男に渡された。


ずっと、ずっと。
『A』だけは、変わらずに、ここにいたのに。

『A』もついに、ここを離れるんだ。

__こんなところにはいたくない。
自分だって、そう思っていたし。
だから『A』が「買われ」て、ここを出て行くんだったら、
そのほうがいいのかもしれない。
そんな風にも思う。

そのほうがいいんだ。
そう思った。

よかった。
よかったね。
そんな風にも、思った。

でも。
でも。


『A』の鎖を受け取った男が、黒服の男の一人に何かを伝える。
その黒服の男が、服の間から出した封筒を、ロウバンに渡しにいくようだった。
そして『A』は、鎖をつかまれ、ひっぱられていく。

『A』が、行ってしまう。


話しかけたことなんて一回もなくて、
目が合ったこともなくて、
でも、ずっと、『A』だけはいつも、いたから。


__さみしい。

この気持ちを「さみしい」と呼ぶんだってこと、
そのときは、知らなかった。

でも、
さみしくて、さみしくて、たまらない。

だから。


「まって!」


気がついたら、そう、叫んでいた。

……叫んでいたつもりだったけれど、実際は、
そんなに大きな声は出ていなかったんじゃないかなと思う。

叫んだあと、
自分の声がずいぶんとかすれていたことにも気づいたし、
声を出すこと自体が本当に久しぶりだったから、きっと少し、震えていた。

自分が言葉を覚えていたのが、不思議なくらい。


黙れ!
ロウバンのひとりが、首に鎖をまいてしめつける。
喉がしまって、苦しくてむせる。

お前!売れてもいない商品が口を開くな!
そう言って、しめつける。

首の鎖はどんどんときつくなって、むせることもできなくなって、ただ苦しくて、涙が出た。
滲む視界で、『A』を見た。
『A』もこっちを見ている。

(はじめて、めがあった)

そうか、『A』はあんな顔をしていたんだ。
『A』は、あんな目の色をしていたんだね。

だんだんと頭に血がのぼってきて、
耳の奥から聞こえていた心臓の音が、頭の中でどんどんと大きな音になって。
目の前がチカチカして、それから真っ暗になる。


__その辺でもういいんじゃないですか。
言ったのは、あの男が指示を出して、ロウバンの元に向かわせていた黒服のようだった。
頭の後ろから小さく舌打ちがきこえて、
首をしめつけていた鎖の力が弱まった。

必死で呼吸する。
のどがつぶれたみたいになって、うまく息が吸えなかった。
涙と鼻水と唾液とが、うそみたいに出てきて、
とにかく頭が痛かった。
うずくまってしまって、なかなか起き上がれない。

でも、必死で息を吸い込みながら、顔をあげる。
『A』の顔が見たかったから。

ライトがすごく、まぶしかった。
まぶしくて、よく見えない。

それでも必死に探したけれど、
『A』の姿を見ることはもう、できなかった。

行っちゃったんだな。
それがわかって、また少しだけ、涙が出た。
涙も、頭がものすごく痛いのも、
ただ目を閉じることでしか、やり過ごすことはできなかった。



その日、その後に待っていたのは、
罰。
あの明るい場所の中で、声を出してしまったことへの罰。

何人ものロウバンがやってきて、
かわるがわるに痛めつけていく。

痛かったり、熱かったり、苦しかったりした。
それから、もとから少なかった食事が減った。
食事だけじゃなくて、いつも少しだけ与えられていた水も、
もう、もらえることはなくなった。

身体中が痛くて、
息をするたびにその痛みは増した。
お腹がすいて、
喉も乾いて、
もう少しだって、動くことはできなかった。
どんどん寒くなって、
身体はぶるぶると震えるけれど、その身体をまるめることさえできなかった。

だんだんと震えることもなくなって、
指先さえ、動かなくなった。


「お前、死ぬのか。」
ロウバンの一人が声をかけてきた。
いつも少しだけ、痛そうな、悲しそうな、苦しそうな、
そんな顔で見つめてきた人だ。
その人になにか応えたくて口を動かしたけれど、
声もでなくて、
何を言えばいいのかもわからなくて、
けっきょくそのまま、口を閉じた。

それから先、その人の顔を見ることはもうなかった。

さらにそれから数日が経った。
もう遥か遠くに眺めることしかできなくなった、あの小さな窓からは、
『A』の髪の毛と同じ色の日がさしていた。

どうにか目を動かして、ただその「光」を見つめていた。
そんな日が何日か続いて、それから、
もう、目を開けることも難しくなった。

けれど目を閉じると、浮かんでくる。
『A』の髪の色。
あの日いっかいだけ、見ることができた『A』の顔。目の色。
まぶたを閉じれば、その姿を見ることだけは、いつでもできた。


だから、もう、いいかな。
そう思った。

もう無理だった。
これ以上は。

だからあとはただこのまま、眠ってしまえばいい。
そんな風に思っていた。



……救い出されたのは、その、さらに数日後。

目を開けると、そこはまるで別世界で。
「救い出された」ことさえ最初はわからなかった。


初めて見るような真っ白の天井。
嫌なにおいもしないし、灯りもある。
何かあたたかくて、ふかふかなものの上に寝ている。
誰かの声が聞こえた。

「大丈夫。もう、大丈夫だよ。」


じぶんは、どうやら、いきているみたい。


働かない頭で、やっとそれだけはわかって。

そうしてまた、目を閉じた。
まぶたの裏にうかぶのは、やっぱり、『A』の姿だった。

(__あいたいな。もういちど。)

そう思いながら、眠りについた。



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comment

はじめまして。

  1. 2010/03/03(水) 00:26:41 |
  2. URL |
  3. 黒目
  4. [ 編集 ]
どちらにコメントしようか迷いましたが、最新のこちらの記事にて失礼します。
アルファベットの旅人、読ませていただきました!
構成や表現がすごい!ものすごく惹き込まれる物語ですね。
特に一本の木は、切なさと優しさが絶妙で、泣いてしまいそうでした。
AとZ、二人がこれからどうなっていくのか・・・
続き、とっても楽しみに待ってます。
またお邪魔させていただきますねー

Re: はじめまして。

  1. 2010/03/03(水) 00:56:56 |
  2. URL |
  3. 花舞小枝の春
  4. [ 編集 ]
>黒目さん

コメントありがとうございます!
初めていただいたコメントです…すごく嬉しいです;_;
しかも、なんだかそんなに褒めていただいて、
恐縮やら嬉しいやらで
ニヤけるのがとまりません。
たぶん、ゆっくりとしか更新できないかと思いますが、
またぜひ、読みにきて下さいね。
ありがとうございます、がんばります☆

にーはお

  1. 2010/03/03(水) 22:09:25 |
  2. URL |
  3. あかゆう
  4. [ 編集 ]
日本人です(笑)

アルファベットの旅人読ませて頂きました。
素晴らしい世界観で、話に一気に引き込まれてしまいました。
木からの視点で書くなんて、凄いですね(´Д`)
しかもそれが不自然じゃない。

また読ませてもらいますo(^-^)o

Re: にーはお

  1. 2010/03/03(水) 22:58:18 |
  2. URL |
  3. 花舞小枝の春
  4. [ 編集 ]
>あかゆう さん

コメントありがとうございます!
タイトル以下、全部漢字だったらどうしようかと思っていましたww
私の語学力とPCでも対応できてよかったです。
ありがとうございます。
未熟者の初心者ですが、楽しんで、がんばります*^^*

no title

  1. 2010/03/26(金) 21:12:12 |
  2. URL |
  3. 精米致志
  4. [ 編集 ]
アルファベットの旅人、読ませていただきました。といってもまだ二話目なので、これから急いで最新まで読みたいと思います。とても続きが気になる終わり方で、書き口もメランコリックなところが個人的に気に入っています。

突然で失礼なのですが、もしよろしければ相互リンクをお願いできないでしょうか。嫌ならば無視してもらって構いませんので。

それでは、失礼します。

Re: no title

  1. 2010/03/26(金) 22:32:17 |
  2. URL |
  3. 花舞小枝の春
  4. [ 編集 ]
> 精米致志 さん

コメントありがとうございます*^^*
メランコリック……WEB辞書ひいちゃいました。笑
むぅ~ん、と思いましたが、気に入っていただけたようで、
それなら、とても嬉しいです☆

相互リンクですが、実は、よくわかっていなくて。
それで、「リンク」には今まで、手を出さずにいたのでした。
が、
せっかくなので、やりましょう。笑

初リンクです*^^*
よろしくお願いします。

コメント、ありがとうございました!

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