旅の空でいつか

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一本の木 /A  ★絵祭り作品掲載★

  1. 2010/05/18(火) 00:19:53|
  2. ★完結★ 『アルファベットの旅人』シリーズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
※作品一覧はコチラです

tree_before_bytounosan
傷だらけの背中を僕にあずけて、
お日さま色の子どもはいつもただ、ひざを抱えて座っている。

(「Touno's soliloquy painting」の遠野さまより、『tree』)


※3月1日に掲載した内容です。
 「もーいーよ!!」という方は、絵のみ、お楽しみ下さいませ。
※明日から『A』編を、数話。ファイナルです。ドキドキ……> <


本編は《続きを読む》からスタートです!


***************



僕のいる街の人たちは、いつも忙しい。

朝は日ものぼる前から掃除や料理の音が聞こえてくるし、
昼は子どもたちもみんな、
掃除をしたり物を売ったり動き出す。
夕方になればお酒の臭いをまき散らして笑い騒ぐ声が聞こえてくるし、
夜になれば甘いにおいの女の人たちが仕事を始める。

騒がしいケンカはいつもそこらで起こっていたし、
もっと静かな暴力も数えきれないくらい見てきた。


僕はいつもそれを、遠くからみているだけ。


いつも忙しく、いろんな音や声やにおいに満ちた街。
そんな街の外れの、片隅の片隅に、いつも僕は立っている。

僕は、1本の木。
もう何十年か前から、この街にいて、
もう何十年も、遠くから、この街を眺めている。

毎日、毎日、眺めている。



僕のところには、あまり、街の人たちは来てくれない。
僕がそこに立っていることにさえ
気づいている人は少ないのかもしれない。

僕がいるのは、街の外れの、
本当に本当に隅っこで、
近くには家なんて立っていないし、
あまり陽もあたらないし、
僕には、キレイな花や実がなるわけでもない。

それでも時々、僕に気づいてくれる人もいる。

お酒に飲まれた人。
お酒だけじゃない、もっといろんな臭いをまき散らした、すり切れたような布をまとった人。
疲れきってやせ細って、どうやって動けているのかもわからないような人。
そんな人たちは大抵、住む家や暮らす家族がいなくて、
それで、僕の枝の下をねぐらにするんだ。

でも、
僕にはあまり陽もあたらないし、
だからちゃんと雨宿りできるほどの枝葉ものびていないし、
花も実もならないし、
みんなが住んでいる場所からは本当に本当に遠いから、
そんな人たちもすぐにいなくなってしまう。

僕の側にいても、
雨風もしのげなければ、何か食べ物にありつけることもない。
打ち捨てられたような残飯すら手に入らないから。
だから、仕方が無いんだ。


けれどある日、一人の人間がやってきた。
まだ小さい。
人間の年齢はよくわからないけれど、
生まれてから、おそらく、10年も経っていない。

きっとどこか、他の街からやってきたんだろう。
僕は、こんなにみんなから遠いところにいるから、
直接街の人たちの姿を見ることはできなかったけれど、
声や音はよく聞こえるし、
街の様子は鳥や風たちが教えてくれる。
それはまるで、この街の隅々まで見えているみたいな気分。
だからこの街の中に、
僕の知らない場所はないし、僕の知らない人はいない。

その子どもは、とても目立つ髪の色をしていた。
毎日ちょっとだけ、僕にもさしてくれるお日さまの色。
あたたかくて、優しい色だ。
こんな子がいるなら、僕が知らないはずはないもの。

お日さま色の髪の子どもは、
初めて僕のところに来た時、
ただ、じっと、座っていた。
もうすぐ冬になる、人間ならきっと「肌寒い」と感じる季節だろうに、
その子が身にまとっているのは、すり切れて汚れたTシャツだけ。
僕に背中をあずけて、膝をかかえて、
ただ、じっと、座っていた。


その子はそれから、よくやってくるようになった。
身にまとう布は上等なものに変わっていったけれど、
いつもただじっと、膝をかかえて、座っている。
服が汚れることなんかは、全然気にしないみたい。

その子どもが、どこからやってきたのかはわからないけれど、
どうやらこの街の、僕とは正反対の場所に位置する
大きなお屋敷に住んでいるらしいことがわかった。
お屋敷にはいつもたくさんの人間がいて、
街の人たちはみんなすごく怖がっているけれど、
そのお屋敷の人たちが何をやっているのかは、僕は良く知らない。

その子どもはいつもひとりでやってきて、
何をするでも無く、去っていく。
でも、少しずつわかってくることもあるんだ。

たとえば、その子どもの服の下。
たくさんの傷がある。
もう古い傷がほとんどだけど、時々、新しい傷も作ってくる。
見えはしないけど、わかるんだ。

たとえば、その子どもがなんと呼ばれているか。
『A』と言うらしい。
人間の名前にしては変わっている。
鳥たちからは、その子どもが『飼い犬』と呼ばれていることも聞いた。
不思議な話。
どうして『犬』と呼ばれているのか、僕にはよくわからない。


傷だらけの背中を僕にあずけて、
お日さま色の子どもはいつもただ、ひざを抱えて座っている。

他にも、わかることはある。
お日さま色の子どもは、すごく、すごく、
……うまく言えないけれど、
いつも、すごく、悲しそう。

背中なんかより、もっといっぱい、傷ついているみたい。
だってそうでなきゃ、
寒くもないのに震えることも、
血がにじむほどに唇をかみしめることも、
小さな物音におびえることも、
こんな、誰もいないところでまで涙をこらえることも、
そんなこと、しないはずなんだ。

それで僕はいつも、悲しくなる。

僕にも花が咲けばいいのに。
甘い実のひとつでもなればいいのに。
あの子どもの髪の色のような、あたたかい光がもっとさせばいいのに。

それで、あの子どもが少しでも悲しくないように
何か少しでも、僕にもできたらいいのに。


その子どもはいつも、一日の長い時間を僕のもとで過ごして、
暗くなると帰っていく。
あの、大きなお屋敷へ。


また明日、僕のところには来るのかな。


また来てくれるといいな。
僕にできるのは、あの背中に触れていることだけだけれど。

震える肩を抱きしめることも、
痛々しい唇をなでてあげることも、
安心して、って肩を抱いてあげることも、
見えない涙を拭ってあげることも、できないけれど。


僕は、1本の木。
もう何十年か前から、この街にいて、
もう何十年も、遠くから、この街を眺めている。

毎日、毎日、眺めている。



tree_before_bytounosan
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comment

切ない…

  1. 2011/08/10(水) 23:01:08 |
  2. URL |
  3. 星乃瑠璃
  4. [ 編集 ]
 絵のおかげでイメージできました。

 なんだか切ないな~と思いました。
 けど、この気の語るお話は悲しいけど暗くは感じませんでした。
 お話に出てくる子は、Aなんですか!
 かわいそう・・・

Re: 星乃瑠璃 さま

  1. 2011/08/12(金) 00:19:01 |
  2. URL |
  3. 花舞小枝の春
  4. [ 編集 ]
続きまして、こんばんは☆

> 絵

本当に本当に、すばらしいのです……!
この方以外にも絵を描いて下さったブロともさん方がいらして、
恐縮ながら作品一覧の一番最後の項目のあたりから探してもらわないと
(記事がうもれてしまって、ますます)見つけにくいのですが、
そちらもお時間ありましたら、ぜひ……!

>  お話に出てくる子は、Aなんですか!
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コメント、ありがとうございました☆

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