旅の空でいつか

ご訪問いただき、ありがとうございます
はじめましての方は、メニューの「はじめに。」や「作品一覧。」をご覧ください。
記事内容の無断転載は厳禁ですが、リンク&URLの転載はフリーです。ご一報いただけると嬉しいです☆
ブロとも申請は歓迎です☆
みなさま、どうぞ楽しんでいって下さいね*^^*

スポンサーサイト

  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

逃げる・1

  1. 2012/08/06(月) 23:41:48|
  2. ★完結★ 『逃げる黒』
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
※作品一覧はコチラです


みなさまこんばんは、春です・v・

『逃げる黒』です。
5〜6話で終える予定なので
今月中にはちゃんとしまってくれるはず。

こちらだけでも大丈夫なように、とは思って書いていますが
『ハミングライフ』の方も読んで頂けていると、よりスムーズかと思います。

『no named』を書いて、
あぁわだかまったまま放置してたものもちゃんと書いておくって
すごくスッキリするんだな、
とあらためて気づいてしまいまして…
…そこでの『逃げる黒』です。

お付き合い頂けますと嬉しいです。


それでは、
《続きを読む》よりおすすみください・v・

***************


「ねぇ、ちょっと話きいてよ」

仕事を終えて宿に帰ろうとしているときだった。
声をかけてきたのは、赤っぽい茶色の髪をした長髪の男だ。
年齢は20代の中頃と言ったところだろうか、自分より少し年下に見える。
前歯が1本欠けているのが印象的だった。

「……」

知らない人間だ。関わる気もなかった。
けれど、無視して立ち去ろうとしたスーの袖口を男は掴んでしまう。

「……離せよ。眠いんだ。話し相手なら他のヤツ探してくれ」

「いやいや、お兄さんがいいんだよ。
 なぁ、兄さん“逃がし屋”だろ?
 昨日だって逃がしただろ、俺の獲物さんをさー」

最後の一言のせいで、立ち去りにくくなくなってしまった。

スーは前夜、この街から1人の男を逃がした。
多額の、返すあてもない金を借り、その厳しい取り立てに危機を感じていると言っていた男だ。
目の前の男は、どうやら取り立てていた側の人間らしい。

どう答えたものか。
考えているうちに、袖口を離した男は自分のテーブルの正面の席を
足で蹴飛ばすように押して、スーの座る席をつくってしまう。
そしてそのまま、店員に向かって、勝手にスーの飲み物を注文してしまった。
ため息をついてスーは腰掛けた。

「最初に言っておくけどな。
 オレは別に“逃がし屋”なんて仕事してねぇから。
 で、あれだ。昨日のヤツも、いったんちょっと避難させただけだ。
 あんたらの行儀が悪すぎるんでな」

長髪の男はニマニマと笑って言う。

「借りた金、いつまでも返さないアイツが悪いんだよ。
 行儀悪いヤツに、ちょっとくらい行儀悪いことしたって問題ないっしょ、てね。
 催促して、ちゃぁんと返してもらうようにするのが俺の仕事なわけだし」

「……仕事の邪魔したのは悪かったよ。
 オレも金ないから、借金の肩代わりはできないけど。
 そこはまぁ、謝っとく」

スーが下手にこの場を立ち去らなかったのは、
ごく一時的にとは言え仕事をさせてもらっているこの店に、迷惑がかかってしまうことを危惧したからだ。
逃がした男の話では、彼らの取り立ては執拗で、陰湿だった。

スー自身、油断していた。
逃がした男は、偶然数日前に出会っただけの他人だったし、
逃がしたと言っても、多少の手助けをしただけだ。
だから、こうもあっさりと、自分が逃がしたことがバレてしまうとは思わなかったのだ。

何か因縁をつけられて、自分も追われる身になってしまったら面倒だな。
そんなことを考えるスーに、けれど長髪の男は
「まぁ、いいよ。もう」
と言った。

「勝手に獲物さん逃がされちゃったのは困ったけども、
 まぁ、もういいんだ。
 今日はさ、本当にちょっと話がしたくて声かけただけだから」

「話?」

「うん」

「……おい、本当に話し合い手探してるだけなんだったら、
 やっぱ他のヤツ探せよ。誰でもいいだろ。
 言っただろ。オレはもう眠いんだ」

「誰でもじゃねぇんだよ。俺は“逃がし屋”だから、兄さんに声かけたんだ。
 話し相手つーか、ただ聞いてくれてるだけでもいいんだけど」

「だから、オレは別に“逃がし屋”じゃねぇって」

スーは、ただの旅人だ。
今いる国よりももう少し北の国で生まれたのだが、
事情があって逃げ出し、
逃げているうちに国を超え、いつしか旅人と呼ばれるような暮らしをするようになってしまっていた。

「でも、逃がしただろ昨日。
 あんたは仕事のつもりでやってることじゃないかもしんねぇけどさ、
 コッチじゃけっこう噂になってるよ、“逃がし屋”の存在って。
 言っても若めの黒髪のチビな男、てだけの情報だから、
 あんたの身バレまではしてねぇけど」

「よく、オレだってわかったな。
 人違いだとは思わなかったのか?」

「うん。だって俺昨日追ってた側だもん。わかるよ」

わかるよ、と言われたことが不思議だった。
昨夜スーは、念のためにと全身が隠れるような服を着ていた。
すぐ後ろまで追っ手が来ていたことには気づいていたから、
声を聞かれないよう、逃がした男とは言葉もかわさなかったのだ。
だからわかるのは、せいぜい身長と、動き方から判断されての性別くらいのもののはずだった。

「あぁ、あのね、声」

「声?」

不思議そうに考えるスーの表情を見て、長髪の男が言った。

「これでわかるか?」

長髪の男は、テーブルに乗っていたグラスの水で紙ナプキンを湿らせ、
それで自らの毛先を拭いて見せた。

(あぁ……)

すると男の毛先からは、少しずつ赤茶の色が抜けていって
その下から、光るような金色の髪があらわれた。
そうされてからあらためて見てみれば、男は深い青い色の瞳をしている。

「あんた、あれか。すげぇ耳がいいヤツか」

「正解ー!
 お兄さん、昨日は何も喋ってなかったけどさ、
 やっぱ、走って息きれたりしてると
 呼吸の時にちょっと声出たりするじゃない?
 聞こえちゃったんだよね。
 だからこの店入ってお兄さんの声聞いて、すぐわかった」

スーの生まれた国にも、いた。
金色の髪に青い瞳を持った人間たちが、多くの場合は隠れるように暮らしていた。
彼らは総じて、他の人間よりも目鼻立ちのハッキリとした美しい造形をしており、
そして、異様に感度のいい聴力を持っていた。
まだ旅人になる前、生まれた国に住んでいたころ少し強引な縁で、
スーもほんの数年だけ、そういった人間と暮らしたことがあった。

「あんた、何で髪染めてんだ。
 こっちの国じゃ、あんたたちは優遇されているだろう」

スーの生まれ育った国では、金色の髪の人間たちは搾取される側にいた。
金でない髪色の人間たちは、目立ち特異な外見をしている金色の髪の人間たちを
基本的に自分たちの暮らしの中に受け入れることはしなかった。
そのせいもあってか、彼らの多くはまとまって、身を隠すようにして旅の暮らしをしていた。
中には聴力を活かした仕事を得て一所に身を落ち着ける者もいたが、
そうした“はぐれ”た生活をしている者たちの中には、身売りの被害に遭うものも多かった。
状況は改善されていってはいたが、それもまだまだ途上だった。

だから、逃げるような旅の中で国を超え、スーは驚いた。
この国では、金色の髪の人間たちは皆
自由に暮らし、様々な職につき、
その聴力のせいか多くの場合は多くの成果を出していて、高い地位を得ていたのだ。
幼少のころからの学習の環境でも優遇的な措置を受けられているようで、
生まれつきの体質での優遇に
他の人間たちはやっかみを持ちつつも、羨望や尊敬のまなざしを向けていることが多かった。
国が違えばこんなにも違うものなのかと
スーは当初、随分と驚いたものだった。

そして、だから解せなかった。
金色の髪が有利にはたらくこの国で、
なぜ、目の前の男はその髪色を隠すようなことをしているのか。

「あ、俺の話聞いてみる気になった?」

長髪の男は嬉しそうに、またニマニマと笑った。

「まぁな」

この国では金髪でなく、黒髪への待遇が悪かった。
黒髪、黒の瞳、そして黒い肌は、
「美しくないもの」「能力の低い者」の象徴のようにされていた。
スーも深い黒色の髪と瞳を持っていたが、
肌は金髪の人間たちと同じほど白く、そのせいもあってか、それほどは酷い扱いを受けたことがない。
それは、ひとところにとどまらず
ふらふらと旅を続けているからこそ思える感覚なのかもしれない、とも思ってはいたが。

「いやぁ、ねぇ。
 この髪色の人間てさ、なぁんかみんな優秀じゃない。
 で、絶対数も多くないからさ、目立つじゃない」

「そうだな」

「でも残念ながら俺、そんなに優秀じゃなくってさぁ。
 むしろけっこう下の方っていうか。
 学校だってなんだって、金髪の人間がこんなにできないわけがないーって、
 心配されたり困惑されたり、そりゃもうけっこうなプレッシャーでさ」

上等な家柄も、与えられた優遇も羨望のまなざしも、
男には自分を押しつぶすプレッシャーにしかならかったのだ。
それで男は、居心地の悪さしか感じられなかった故郷を捨てて、
転がり込むようにこの街にやってきたのだと言った。
それまでの間に髪を染め、町々でケンカを覚え、
食って行くための金の稼げる、様々な仕事に手を染めることも覚え、
そうして、今だ。

「あー……うん、なるほどな」

スーにも覚えのある話だった。
身の証明のできないような状態で、まっとうな職につくのは難しいのだ。
生きて行くには食が必要で、食のためには職が必要だった。
まっとうな職につけない以上、そうでない職につくしかない。
それは、わかる。

「あ、お兄さんにもわかる? この感じ。
 “逃がし屋”って、でもそうか、どっちかつったらコッチ側の仕事か」

「いや、だからそれは仕事じゃねぇって。
 オレの仕事は、ここみたいな食い物屋の運び手伝ったり料理手伝ったりって、
 そんなんだよ」

「じゃあなんで“逃がし”なんてやってんの?」

「……なんでだろうな」

スー自身にもわからなかった。
自分が逃げている身であるからだろうか、
周囲には、気づけばいつも「逃げたい」人間が集まって来た。
スーがしているのは、場合や状況によって、それらの人間が逃げるのを手伝うことだ。
厳密に言えば、手伝いですらないことも多い。
昨夜の男に関しては明確に手伝ったが、
逃げたがっている人間の話を聞くだけだとか、若干のアドバイスをしてやるだとか、
スーのしていることと言えば、せいぜいその程度だ。
もちろん、無視をすることも多くあった。

「あんたは、なんでオレに声をかけたんだ?」

誰でもいいはずの話し相手に、“逃がし屋”としての自分が指名された理由がわからなかった。

「んー……記念、みたいな?」

「は?」

何の記念だ。
わからないスーに長髪の男は言う。

「俺もさ、逃げることにしたんだよね。
 この街とも、今夜でおさらば。
 だから記念に、せっかく見つけた正体不明の“逃がし屋”さんと話がしてみたくて」

「あんたも、逃げるのか」

男は笑って頷いた。

「まぁさ、ずっと思ってはいたんだよ。
 身元不明な人のまんまじゃ、ロクな仕事にはつけないつってもさ、
 けっこうしんどいのよこの仕事。
 払えるわけないって額の借金させて、追いかけて追いつめてするのってさ」

それはそうだろう。

「中には、ちゃんと払ってくれる人もいるけど。
 追い詰まって、そのままどうにもできなくてどうにもなんなくなっちゃった人とか、
 もっと追い詰まってる人のこと騙したり売ったりしちゃう人とかもいたし。
 アレだろ、俺みたいな髪の色って、他の国じゃ高く売れたりするんだろ?」

「オレがいた国は、そうだったな」

「だろー?
 だからさ、そういうガキ攫って売っぱらうような獲物さんとかもいてさぁ。
 そういう売り口斡旋してやるのも俺らの仕事なんだけど、
 なんかこう、後味悪くてさ。
 ちょっともうやってらんねぇなぁって、思っちゃって」

簡単な話が、足抜けだ。
この街にいたままでは、所属している組織に首根っこを掴まれたままで、
きっと生涯、この仕事をやめることはできないだろう。
それがわかってしまって、男は逃げることにしたのだ。

「……何か、オレに手伝えることはあるか?」

我ながらおせっかいだ。
そう思いながらも、スーは尋ねた。
どこか無視できない境遇を持った、金色の髪を隠したこの男を、
どうにかして無事に逃がしてやりたい。
この男の知り合いや親戚などでは到底ないだろうが、
金色の髪の人間に、スーはかつて世話になったことがあった。
恩を返すことも、感謝をきちんと伝えることもないまま、
その人間とは別れてしまった。
目の前の男とは関係のない話だとはわかっているが、
何かできるのならしてやりたいと、スーは思う。

“逃がし”は、あまり派手には行えない。
特にこの男のような、何かの組織が裏についているような場合は。
それでも。

そう考えて提案したスーだったが、
長髪の男は
「ん? いやぁ、別にー?」
と、とぼけた笑顔を見せただけだった。

少しくらいなら力になる、となおも言ったスーに
男は笑顔のままで言った。

「だーいじょうぶ。
 俺、逃げてる人追う側の人間だからね。
 追う側がどう考えてどう動くのかも、
 逃げてる人がどう逃げてるから失敗しちゃうのかも、知ってるんだ。
 だからまぁ、大丈夫だと思うのよ」

「そういうつもりで声かけたんじゃねえからさ」と
長髪の男がニマニマとした笑いをひっこめないせいで、
スーはそれ以上を申し入れることができなくなってしまった。

どこかしら残念そうにするスーに男は言った。

「じゃあさ、変わりにお兄さんの話、ちょっと聞かせてよ」

長髪の男が酒のおかわりをオーダーしに手をあげながら言う。
スーも、今度は自分の飲みたいものを自分でオーダーした。

「お兄さん、違う国から来たんだな。
 どこから来たの?
 どんなとこ?
 せっかく逃げるんだから、思いきって国超えるってのもアリだよな」

「ここより、もう少し北の方。
 言葉とか服装とかはそう大きな違いはないけど、
 あぁ、あっちでは米はあんまり食わないな。パンとか粉ものが多い。
 黒髪はけっこう普通。金髪は、たぶん苦労するぞ。
 一生隠し通す気ならまぁ関係ないかもしれないけど、
 そうじゃないなら、あの国はあまりすすめられないかもな」

「なんで国を出たの?」

「……逃げてるから、かな」

スーの言葉に、長髪の男が笑った。

「なんだよ! “逃がし屋”も逃げてる人間なのか!
 えーお兄さんナニして逃げてんの?
 誰に追っかけられてるのさ。国超えても追っかけられるような悪いこと?」

男の笑い声に、
ここまで正直に答えることはなかったか、とスーは少し後悔する。
しかし、もう遅い。

「別に悪いことしたわけじゃ……ないわけでもないけど。
 前科がつくようなことじゃないし……前科がないわけでもないけど。
 くそ、言わなきゃよかったな。
 別に追われてはいないんだ。オレが勝手に逃げてるだけ」

意味がわからない、と長髪の男はなおも笑っている。
その笑いがおさまったころ、また聞かれた。

「でさ、じゃあさ、お兄さんは何から逃げてんのよ?
 追われてもないのに」

少し考えて、スーは言う。

「……なんだろうな。もうオレにもよくわかんねぇや」

やっぱり意味がわからない、と
長髪の男はまた笑い出してしまった。

本当に、言わなければよかった。
少し不機嫌になってそう考えながら、スーは酒を煽る。

何から逃げているのかなんて、
そんなの、明確に言えるようなものばかりではないのだ。
それでも「逃げている」ということはたしかで、
逃げて、逃げて、逃げ続けているうちに
いつしか“逃がし屋”などと呼ばれたりもするほどに、
自分は逃げることがうまくなってしまった。
仕事でないのは事実だが、
それでも、
“逃げ”のプロだと言えなくもないのかもしれない。

逃げることを悪いことだとは、ひと欠片も思わない。
逃げ続けて、逃げ切れれば、それは勝ったのと同じようなものだとも思う。
それでもスーは最近、考えている。
自分は本当に、このまま逃げ切りたいのかどうなのか。
「逃げない」という選択肢を、もう一度考えてみてもいいのではないか、と。
けれどその選択肢は浮かんでは来るものの、
そうしよう、と思えるほどの決定打には出会えてはいなかった。

だからスーはまだ、逃げ続ける。


仕事を終えて疲れているというのに、
すっかり帰るタイミングを逃してしまった。
翌日が休みで助かった。

長髪の男との時間は、明け方近くまで続いた。


***


明け方、まだ辺りが暗いうちに
「じゃあ、俺そろそろ行くわ」
長髪の男は、そう言って席を立った。
店内は随分と静かになっていて
窓から見える、薄青く深い朝の空気も、しんと静かに張っている。

話聞いてもらったからな、と奢られそうになったが
これから逃げる身では金が必要になってくる場面は多々あるはずで、
スーが奢ってやることにした。
“逃がし”の手伝いは断られてしまったが、これくらいならしてやってもいいだろう。

店を出て、去り際に男が言った。

「ありがとな、兄さん。
 話聞いてもらって、ちょっと楽になったよ。
 今さらだけど、兄さんの名前、なんていうの?
 教えてよ。覚えておくからさ」

「スー」

ふむ、と考えてから長髪の男は重ねて尋ねた。

「それ本名?」

「いや、偽名」

あっさりと答えたスーの言葉に、長髪の男は楽しそうに笑う。

「だよねー!
 俺も偽名とか考えなきゃなぁ。かっこいいのがいいな」

「あんたは、なんて名前なんだ。オレも覚えておく」

楽しげに、男は言う。

「内緒。
 どうせお兄さんだって、本名教えちゃくれねぇだろ?」

「まぁな」

いつかまた会うことがあって、カッコいい偽名を思いつけていたら、
その時はその名前を教えてやるよ、と男は言う。

けれど会うことはないだろう。
スーが旅の生活をはじめてから、もう12年以上になる。
いろいろな人と出会った。
特に仲のよくなった数人の人間たちとは
「またいつかどこかで」と
そう言って別れたが、
未だに、そのうちの誰とも再会できたためしはない。
だからきっと、旅とはそういうものなのだろう。
根を張らないその生活を哀れむようにする人間も多くいたが、
ひとところにとどまらない今の生活の「楽」さに関しては、
少なくともスーは気に入っている。

「じゃあな、スー」

一瞬だけ手を挙げて、長髪の男は朝闇の中に姿を消した。
その背中が見えなくなるのを見送ってから、スーは宿への道についた。


宿への帰路で、思う。
自分もそろそろ、この街を出よう。
また旅に出られるぐらいには金もたまった。

そうしてスーは
また、逃げるための旅路についたのだった。


(to be continued...)

※作品一覧はコチラです

スポンサーサイト

<<逃げる・2 | BLOG TOP | 本ブログの変更点のお知らせなど>>

comment


 管理者にだけ表示を許可する
 


trackback


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。