旅の空でいつか

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ピアス_3

  1. 2011/12/13(火) 23:24:09|
  2. ★完結★ 『ハミングライフ』シリーズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
※作品一覧はコチラです


こんばんは、春です・v・
引き続き『ハミングライフ』です。

結局いっこまえのヤツは、文章整えるどころか
誤字・脱字・なんか余分な文字
を見つけたにも関わらず、修正もしていないという有様ですが、
ちょっとこのまま進みます。(恥

すみません……
ていうか私がひたすらなおさら恥ずかしい。。。


《続きを読む》よりおすすみくださいませ☆





***************


ピアスが“弟”につききりの生活になっても、
家主ものっぽも、何も言わなかった。
最初に病院を訪れた翌日には、ピアスはもう仕事先に話をつけに行っていて、
“弟”一色、といった生活が続いた。

朝には自ら用意しておいた食事を持って出掛けて行って、
帰ってくるのは日が沈んでからだ。
夕食は帰ってからとるようにしていたけれど、
それも自室にこもってすましてしまうばかりだった。
ピアスと家主とのっぽとの3人、顔を合わせない日が続いた。
それでも何も言われなかった。
少し心苦しい気もしたけれど、その配慮が、今のピアスにはありがたかった。

ピアスが“弟”の病室を訪れるようになって、
3日目には、コウも病室の外で待っているようになった。
4日目からは、最初に病室に入室する時と帰宅の時に付き添われるだけで、
それ以外の時間は、コウが自分のIDをピアスに持たせてくれたので、
“弟”の病室と院内であれば
見張りもなく、ピアスは自由に出入りすることができるようになった。
IDはもちろん、朝に借りた後、帰宅時にはコウに返す。
常に携帯していなくても困りはしないが、もちろん、大事なもののようで、
コウはいつも、コートの内ポケットの中に大切にしまっていた。
ピアスを贔屓する気にあふれている、とコウ自ら言っていた通り、
これはおそらく破格の扱いなのだろうということは、ピアスにもわかっている。

髪色を変えた。
病室に入るまではその髪も隠れるほどに深く帽子をかぶって、
淵の太いメガネをかけ、
襟をたてて顔の下半分もさりげなく隠している。
そういったピアス自身の努力を評価してくれた、ということもあるだろうけれど、
それでも、自分に寄せられたコウの信頼は
重い、と申し訳なく思うくらい、やはり、ありがたいことだった。

そのかわりに、“弟”と話した内容はできる限り漏らさず
コウたちに伝えることになっていた。
もちろん、“弟”がそれをよく思わないだろうということはわかっていたので、こっそりとだ。
スパイのようなことをして“弟”に申し訳なくも思ったけれど、
自分がそうしていることを表に見せなくとも、
おそらく、“弟”はわかっているだろうとピアスは考えている。

いずれにしても、“弟”のする話は、いつも変わらない。
自分は大丈夫だから。
母さんに会いたい。
母さんについていたい。
口にすることと言えば、その3つくらいのものだった。

その“弟”は、治療が必要な傷はほとんど治ってしまっていて、
もう病院にいる必要はなくなっていた。
それでも病室にとどめられているのは、ひとえに、
母親の処遇を決めるのにまだ時間がかかっているからだ。

“弟”自身は気づいていなかったけれど、
母親が正式に逮捕されるのに必要な証言を、すでに“弟”はしてしまっていた。
母親が暴力をふるっていたということを、
ピアスが病室を訪れた最初の日に、“弟”は喋ってしまっている。
それはコウも直接聞いていたし、もう、逃れようのない事柄だ。
理由がいかなるものであっても、
……それがもし、“弟”の言うように本当に、
“ペリドット”を失った悲しみからのものだったとしても、
それは関係のない事柄なのだ。
暴力をふるっていたという事実は変わらない。
逮捕後の処遇に変化はあるだろうが、逮捕自体は避けられないのだ。

別の病院に入院している母親の状態が安定次第、
彼女は正式に身柄を拘束されることになる。
そのタイミングを待って“弟”も
退院し、身の振り方を考えねばならなくなる。

ピアスがコウや、コウがいない間、病室の外で待機している部下たちに聞いた話によれば、
その時まで、もうあとわずかの時間を残すばかりだった。

そうとも知らず“弟”は、
母親に会いたいという気持ちの他、最近では、ともかく「退屈」していた。
傷は治っているのだから、当然だ。
いつまでも病室の中に閉じ込められていたのでは、
逆に身体が疼きだすのだろう。
病室にはトイレの設備も整っていたから、「必要ない」ということで、
彼は部屋から出ることさえできないのだ。

ピアスが病室に通い続けた甲斐もあって、
“弟”は次第に母親のこと以外の、
つまりは自分がどれだけ退屈しているか、という話もするようになっていた。

日の上っている間は朝からずっと、ドアの外には見張りがいるし、
夜間は夜間で、見張りはいなくとも、病院のスタッフの巡回があるらしく、
ふらふらと出歩くこともできなさそうだ、という話だった。

昼間は、今は見張りのスタッフの人数も1人に減らされたとはいえ、
張り付きのため、病室から出ることは絶望的らしい。
様子を伺っている限り、
ここに入院しているのがピアスであれば、簡単に脱出できそうなものではあったけれど
“弟”ではそうもいかないらしい。
これはまぁ経験の差だろうなと、ピアスは口には出さずに思っている。
一方、夜間の抜け出しの方は可能性がありそうだったが、
すでに何度か試して失敗しているらしい。

「病院抜け出して、どっか行きたいとこあるの?」

ピアスが訊ねれば、“弟”は「もちろん母さんのところだ」と即答する。
けれど“弟”自身は、母親のいる病院の場所も名前も知らない。
もちろん、隠されているからだ。

ピアスは、知っていた。
“母親”が入院しているのは、実はこの病院からそう遠くはない、
一時間もあれば到着してしまえる場所だ。
病室も知っている。
行こうと思えばいける位置。

「行きたいか?」

そう、コウには一度聞かれていた。
少しだけ考えて、けれどピアスは首を振った。
“母親”に対して何の期待もしていなかったけれど、
初日に“弟”からの話を聞いてから、
ピアスの気持ちはより一層、冷たく萎えてしまった。
気にならないわけではない。
けれど、遠くから顔を見ることも、
同じ建物に入って、同じ場所の空気を吸うことだって、
考えるだけで嫌悪感に襲われた。
もう、一切関わりたくない。そう思った。
コウにはそれを正直に伝えた。
「そうか」と短く答えただけで、“母親”の話題はそれ以来、
ピアスもコウも、“弟”のことをのぞいては、口に出すこともなくなった。

その“母親”の話題がコウの口から再び出て来たのは、
ピアスが“弟”の病室を訪れてから、一週間後の帰り際のことだった。

病室の外に呼ばれた。

「“母親”の身柄を拘束する日が決まった」

五日後の夕方とのことだった。
“母親”は身柄を拘束された後、今度は遠く離れた場所に護送されて、
そこで罪をあがないながら、
いつかそこを出た際に“弟”と一緒に暮らせるよう、
何かプログラムを受けることになっているという。
そのころには“弟”も間違いなく成人しているから、もう“母親”は
「保護者」としての権利も失っているだろうとのことだ。

“母親”の身柄が拘束されてしまえば“弟”は、
長らく、ガラス越しにしか“母親”に会えなくなってしまう。
そして“母親”の護送される場所は遠い。
コウの管轄も超える。
だからピアスはおそらく、望んでも、見かけることさえできなくなるだろう。

「見ておくか?」

コウは再び聞いた。
けれどピアスの答えも同じで、ただ、首をふっただけだった。
コウも頷いただけだった。

病室にもう一度顔を出して、“弟”に「また来る」とだけ言い残して、
二人は帰路についた。


***************


その夜、久しぶりにピアスは
家主とのっぽと、一緒に夕食をとった。
毎日帰っては来ていたものの、一緒に食卓を囲んだのは
もう随分と前のような気がして、
ピアスはなんとなく、気まずい思いにかられた。

何を話していいのか、よくわからなくなってしまっていた。
2人との顔の合わせ方や、話し方。
今まで意識したことも無かったはずなのに、
それらのことがどうしても、思い出せなかった。

そんなピアスの様子を気にかけてか、
家主はやはり、とりたてて何を言うこともなく、
ピアスが思い出せない分を補うように、「いつも通り」の様子を見せた。
のっぽも基本的には同じで、
けれど食後のお茶は、いつもより丁寧に淹れてくれた。

常よりも静かな気のするリビングで、ピアスは伝えた。
“母親”の身柄が正式に拘束される日が決まったこと。
自分は“母親”に会う気はないけれど、
“弟”があの病室にいるもう数日は、"弟”には顔を出しに行こうと思っていること。

家主は黙って聞いていた。
ピアスは本当は、“弟”がどこかの施設に行くのなら、
この家に来ないかと、そう誘いたい気持ちになっていた。
けれどピアスが家主になるのではそれは叶わないし、
じゃあ家主のつくる新しい家に、と考えたところで、
自分がいない場所に誘うのであれば、他の施設であろうが家主の元であろうが、
そう大差はないような気もした。
第一、家主とピアスにつながりがある以上、それだって無理な話なのだということもわかっていた。

ピアスの気持ちに、家主は気づいていたのかもしれない。
けれどピアスが何も言わないから、家主も何も言わなかった。


***************


その日の食後、のっぽに「話をしたい」と呼ばれた。
長くなるからと、場所はリビングで、お茶の用意もされていた。
家主はすでに自室にあがっている。

そこでピアスが聞いたのは、のっぽ自身の話だった。
まだピアスが、雨風を凌げる場所を得る前の話だ。
当時ののっぽが、ピアスをどう思って見ていたのか、
どうしてピアスが“死んだ”あと、ピアスを探し歩いたのか。
そんな話だ。

ピアス自身はその話に、のっぽが思うようなショックは受けなかった。
「まぁ、普通そう考えるよな」という程度のもので、
もちろん、のっぽを責める気持ちにもならなかった。

のっぽがその話をしたのは、
今のピアスが、自分と似ていると思ったからだそうだ。
“弟”に、ピアスが負い目や罪悪感のようなものを感じているのではないか、と。
けれど自分とは違って、ピアスはそう感じる必要などないのだと、
それを伝えたかったのだと言う。

のっぽにとって、言いにくい話だったろうということはわかる。
だからそれでもなお、自分に伝えてくれたことが、ピアスには嬉しかった。

のっぽの話を聞いて、ピアスは思う。

彼が言うように、たしかに自分は、“弟”に対して罪悪感を持っているのだろう。
けれどのっぽの話を聞いて浮かんだ気持ちは、
のっぽの意図したものとは別の形をしていた。


長い話が終わって自室に帰ると、
ピアスは自分の中に浮かんだ気持ちの形を、丁寧になぞっていった。


わかってしまった。
自分が今、やりたいこと。
考えていること。

わかっている以上、気づいてしまった以上、
もう自分には、それをせずにはいられない。
それもわかっていた。

それが引き起こすものを考えると悲しくなった。
してはならないことなのだろうとも思ったし、
裏切るもの、それによってこれからなくすかもしれないものを考えれば、
どうしようもないほどに胸が痛んだ。
それでも、自分の気持ちはもう引き返せないところまで来てしまっているし、
それをするための手はずを、
驚くほど冷静に考えられている自分もいた。


***************


翌朝ピアスは、また“弟”の病室に向かう。
いつもより鞄のふくらみがわずかに大きなことに、家主は気づいていた。
けれど家主は、大きくなったふくらみの正体を訊ねることはせず
出かけのピアスに、あるものを渡した。

「……なに、これ。なんで?」

渡されたものの正体は、訊ねずともピアスにもわかっていた。

「作っといた。
 おれが出てくまで別にいいかなと思ったけど、渡しとく」

合鍵だ。この家の。

「なくすなよ?」

そう言って笑いながら、久しぶりに
ピアスの髪をくしゃくしゃにしながら頭を撫でてやって、
家主はピアスを送り出した。

昨夜の話を、そうだこの家主は耳がいいから、
きっと聞こえさせてしまっていたのだろう。
何も言わない家主の、これがきっと、ピアスへの心配の形なのだ。

心配をかけてしまっている。
そのことに、あらためて思い至る。

「ごめん」

それ以外に、どう言っていいのかがわからなかった。
「気にすんな」と言った風に
家主はまた、笑った。

その笑顔に見送られながら、
ピアスは家を後にした。



(to be continued...)


===============



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comment

  1. 2011/12/18(日) 14:33:35 |
  2. URL |
  3. ゆさ
  4. [ 編集 ]
こんにちはです!

ピアスのせいでも弟くんのせいでもないけど、
現在、2人がこうなってしまっている、という不条理(?)が
何と言えばいいのか…目が離せないです(・ω・;)。
ピアスにはヒナタやのっぽやコウさんがいましたが、弟くんには誰もいなかったのか…。
環境が人に与える影響って、結構、大きかったりしますよね。

そう簡単に解決できることではないし、途方もない時間がかかるとは思いますが
2人にとって、少しでもいい方向に持って行けたらいいな…とか、
どきどきしながら見守りたいと思います。

  1. 2011/12/20(火) 19:52:02 |
  2. URL |
  3. KalaKaLa
  4. [ 編集 ]
サイト訪問ありがとうございました。

Re: ゆささん

  1. 2012/01/12(木) 18:19:48 |
  2. URL |
  3. 花舞小枝の春
  4. [ 編集 ]
ゆささん、お久しぶりですーーー遅くなってしまってすみません!!

あけましておめでとうございます。
今年もどうぞ、よろしくお願いします*^^*

ハミングライフ、お、終えました。
なんというか、
見守っていただいていたのに、あの形でよかったのかどうか、とか思いつつ……
自分で書いてるくせに、どうもままならない感じです。

コメント、ありがとうございました☆

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