旅の空でいつか

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ピアス_2

  1. 2011/12/09(金) 21:37:17|
  2. ★完結★ 『ハミングライフ』シリーズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
※作品一覧はコチラです


こんばんは、春です。

『天空の城ラピュタ』やってる隙に、さくっと更新です。
更新したら、私もテレビに戻ります。
ふふふ・v・

『ハミングライフ』シリーズ、続きです。

ちょっと一度も読み直しすらしてないのですが(爆)
ラピュタ終わったらたぶんちょこちょこ修正されることかと思います・v・;


それでは、
《続きを読む》からすすんでやってくださいませ☆






***************



リルベットが入院しているという病院は、それほど大きくもなく
白く小綺麗にまとまった印象をうけた。

「行くぞ」とコウに促されて足を踏み入れた院内も、
スタッフの数はそれほど多くはない様子だった。
男性も女性も、みんな白い衣服に身を包んでいる。

けれど連れて行かれた病室前の廊下には、異質物のように、違った色の服をまとった男たちがいた。
三人。廊下のベンチに腰掛けている。
男たちはやってきたコウに気づいて立ち上がった。

「あぁ、そのままでいいから」

座り直した男たちが、今度はピアスに視線を向ける。

「アズール。話していた、例の研修生だよ」

緊張しながら会釈するピアスに、男たちも会釈を返した。
ピアスが正体を隠さねば鳴らないのは、弟に対してだけではない。
末端の警衛士たちは、リルドットの兄ペリドットは、生存していないことになっている。
もう少し詳しい者であれば、ピアスと名を変えて生存していることを知っている。
いずれにしても“弟”との面会などあり得ない話で、
バレてしまえば混乱を招く。
それを避けるためコウは、ピアスに偽名と、別の経歴を用意していた。
だから今ピアスはアズールという名で、
警衛士の学校を成績優秀で卒業見込みのため、一足早く現場の研修を始めることになった者だということになっているのだ。

「中に、他に人は?」

いません、と答える、どうやらコウの部下か、もしくは役職の下の者たちの声をきくなり、
「じゃあとりあえず、このまま人払いしてて」
と言いおいて、アズールとコウは室内に入っていく。
男たちは、コウを疑うこともなく頷いた。

「二人きりには今はできない。悪いな」

後ろ手に部屋のドアを閉めるタイミングで、コウが小声で言った。
そのままコウは、その場を離れる気配を見せない。
部屋はどうやら個室らしく、
けれどベッドの周りには、丁寧にカーテンがひかれている。

ごく淡いベージュのカーテンの隙間から、
アズールは“弟”に対面した。


***************


最初にリルベットを見たとき、「似てるな」とコウは思った。
ピアスが家を出たのは、9歳の時。弟とは4歳違いと聞いている。
そのピアスと家主が出会ったが今から3年ほど前で、ピアスはもうすぐ、16歳になる年だ。
つまりコウが初めてピアスと出会ったのは彼が13歳のころのことで、
当時のピアスと今の弟とは、ほとんど同じ年齢だ。

生き写しというほどではない。けれど、やはり似ているのだ。
髪の色、瞳の色、輪郭、目鼻立ちといった、外見が。
違うのは、体格と顔つきだ。
当時のピアスは、今では想像のできないほどではあるけれど
避けたくなる程の警戒心を身にまとっていた。
細くはあったけれど、自然と鍛えられた体つきをしていたと思う。

けれど弟の方は違う。
その顔に表れているのは諦めだった。
周囲の人間に対する諦めだ。始めから何の期待も抱いていない、それは冷めたものだ。
体つきも随分と違う。
線の細さは同じだけれど、殴り合いの喧嘩でもしたら、
一撃で、思わず謝りたくなってしまうだろうというほどに貧相だ。
どれだけ似ていても、育つ環境が違うとこんなにも違ってくるのかと、
コウは不思議な気持ちになったのだった。

リルベットは、コウたちの質問には何もこ、一切こたえなかった。
だから、彼との会話を望んでいるピアスの
その期待に応えられはしないだろうと、コウはふんでいた。

カーテンの隙間をくぐったピアスが、アズールが、
無言のまま丸椅子をひく音が聞こえた。
彼を贔屓してやりたい気持ちの強いコウには、どうにももどかしい時間の始まりだった。


***************


“弟”であるリルベットを実際に目の前にしても、やはり、他人を見ているような気持ちだった。

自分たちは「似ている」とコウは言っていた。
けれど、とてもそうは思えない。
毎朝鏡を見ているとはいえ、
自分の顔をまじまじと見ることはこれまでなかった。
それでもやはり、似てないと思う。

けれどこの、似てもいない目の前の人間が、自分の“弟”であること。
その事実はどうしてか、ピアスを喜ばせた。

ピアスは覚えている。
まだ小さかったリルベットの姿。
泣いてばかりでまだ首も座っていなかったころは、自分が世話も焼いてやった。
しばらくして、ピアスは弟のいる部屋への入室を許されなくなったから
“弟”赤ん坊のころの姿と言えば、記憶はそれだけだ。
けれど壁越しに聞こえてくる泣き声やむずがる声や、
優しげに話しかける母親に笑い声をあげていた、その声は覚えている。

年に一度、お互いの誕生日の時には一緒の食卓についた。
リルベットが自分で椅子に座れるようになった年、
もう彼は、ピアスに視線を向けたり、話しかけたりしてくれることはなくなっていて、
それは日頃の母親の態度に似て
ピアスの存在さえ、視界に入れていないのだということはわかっていた。
あの母親ではそう育っても仕方がないと諦めることができたし、
悲しくはあったけれどそれだけではなくて、
あの小さくて脆いばかりだった弟が育っているのだと感じると、どうにも嬉しい気持ちになれた。

どうして忘れられたんだろう。
どうして彼を置いて放っておいたまま、自分はいられたんだろう。

自分が家を出たとき、弟は5歳だった。
記憶とはもう随分と違うけれど、面影は確かに残っていた。

“弟”は、“兄”を覚えているだろうか。
自分を置いて出て行って、勝手に“死んだ兄”を。
“弟”からすれば、ほとんど触れ合ったことのない相手だろうけれど、
耐えきれずあの家を出て行くまでは、大切にしていたのだ。
持ち物も家具もなかったから、
あの家の中には、“兄”のいた形跡なんて残っていないだろうけれど。
“死んだ”と聞いて、悲しんでくれた日はあっただろうか。
当時“弟”は5歳だった。
“兄”に関する記憶が少しくらい、残っていても不思議ではない。

「こんにちは」

“弟”は、ピアスがやってきて丸椅子に腰掛けても、声をかけても、
視線をよこすことはなかった。
そっぽを向く形で、少し離れたところにある窓から外を眺めている。

「こんにちは。リルベット?」

名前を呼ばれて初めて、弟はピアスに顔を向けた。

「……あんたも警衛士?」

声にも面影が残っていた。

「違うよ、まだ、学生。
 あのドアのところにいる人に頼んで、来させてもらった」

「警衛士じゃ、ないんだな」

ピアスが頷くと、リルベットが身体を起こそうとした。
身体のどこかが痛むらしく顔をゆがめている様子に慌てて、支えようとピアスは手を伸ばす。
そのピアスの手を掴んで、リルベットがひきよせた。

「あんたに、たのみがある」

そうして、小声でささやいた。

「母さんに会いたいんだ。オレはもう大丈夫だから。
 ここから出してくれるように、あの人たちに言ってよ」

「……え?」

“弟”は母親から、あの人から、暴力を受けていたと聞いている。
その母親の元から離れて、今やっと安心しているのだろうと、ピアスは思っていた。
違うのだろうか?

「……ちょっと、落ちついて」

優しく身体を引きはがすと、枕をベッドの淵に立てかけてクッションのようにして、そこにもたれさせてやる。

「きみ、母親から、ひどいことされてたんだよね?」

訊ねるピアスの言葉に、“弟”は不機嫌な顔をつくる。

「母さんは悪くない」

そうして出て来た言葉に、今度こそピアスは混乱する。

「どういうこと?
 入院が必要なほど、きみは怪我をしているって、きいてるんだけど……」

「母さんのせいじゃない。全部、あいつが悪いんだ。あの男」

「あいつ?」

嫌な予感がした。
ドアの前に立ったままのコウが、こちらに注意を向けたのがわかった。
けれど動かない。ただ、聞いている。

「あの人、……きみの母親は、誰か男性を連れ込んでいたの?」

最初に浮かんだのは、もう顔も思い出せない、血のつながった“父親”のことだった。
“父親”だって、ひどい人間だと言えるのかもしれないけれど、
記憶にないせいか、“父親”に対する感情は、楽しいものも辛いものも、何も浮かんで来ない。
けれどあの母親のことも、
自分たち兄弟のこともかえりみずに家を捨てた人が、戻ってくるなんてことがあり得るだろうか?

それを聞いてみると、リルベットは首を振った。
“父親”ではない、別の男なのだ。

あの“母親”は、それでは、別の恋人を作っていたのだろうか。
恋人とは限らないけれど、家に呼ぶ程度には親しい誰か。
親戚と呼べるような人間が確かに存在していないことは、
コウたち警衛士もたしかに調べていて、聞いているから知っている。

けれどこの言葉にも、リルベットは首を振った。
嫌な予感が増した。

「じゃあ、それ、誰だ?」

鼓動の早くなっているピアスの様子には気づかず、何でも無いことのようにリルベットは言葉を続けた。

「兄がいたんだ、オレには」

コウがこちらに向けている気配が強くなった。
会話を止めるか、会話に加わりに入ってくるかと思ったけれど、
コウはまだ、ドアの前に立ったままだ。

ピアスの緊張が高まる。
コウの緊張も、きっと少し高まっている。
けれどリルベットは気づかない。

「お兄さん?」

冷静なフリをして訊ねるピアスに“弟”は答える。

「最低なヤツだったって、母さんはいつも言ってた。
 ちっちゃい時から手が付けられないヤツで、大変だったって。
 オレが3歳だか4歳だかの時に、ふらっと家出て、
 そのまま帰ってこなくなったんだってさ。
 それまでは一緒に住んでたらしいけど、オレはほとんど覚えてない。
 けど、母さんが言ってたし、なんか見たこともある気がするから、
 たぶん、本当なんだろう。
 手のかかる、悪いことばっかしてたヤツだったらしいけど、
 母さんは随分心配して探したって言ってた。
 自分でも探してたし、
 住んでた町はもちろん、隣町の警衛士にも捜索願い出しにわざわざ行って」

嘘だ。
それは、嘘だ。
嘘だよ。

捜索願なんて、一度も出されたこと無かった。ピアスは知っている。
あの人が、自分を探すなんてこともあり得ない。それも知っている。
だってあの人は、幼い自分がどれほどひどい怪我をしても、病院にだって連れて行ってくれなかった。
起き上がれないほどの熱が出た時も、気が向かなければ水さえ与えられなかった。
そうだ高い熱が出たあの日は、随分と寒い雪の日で、腹が痛くなるほどのひどい咳がずっと止まらなかった自分をまるで汚いものみたいに見て、庭に放り出したじゃないか。
忘れていたと思っていた。
でも、思い出そうとすれば思い出せるんだ。いくらでも。
あの人は。
自分が直接的に手を下さない形で、オレが弱って死んでいくのを、だってきっと、ずっと待っていた。

「違う、そうじゃない」
その一言が言いたかったけれど、言えなかった。
言ったら、きっと終わってしまう。
そんな気がして、言えなかった。

“兄”のことを話しだした“弟”は少し興奮していて、
サイドテーブルに置いてあった水を含んでから、話を続けた。

「何年も諦めずに探していたけど見つからなくて、
 それでも諦められないって、いつも言ってた。
 それなのに数年後、あっさり死んだって、連絡あってさ。
 オレが思ってた通り、なんか随分悪いことして、
 また別の悪いヤツらに殺されたってさ。
 血がつながってるヤツのこと言うのも微妙だけど、自業自得だし。
 これで母さんもきっと、もう下手に心配することなく、
 逆に落ち着けるようになるんじゃないかって、安心したんだ」

「、……」

コウが何かを言おうと息を吸って、
けれど、黙った。
ピアスにはそれがわかった。それで助かったとも思った。
今はきっと、何の言葉もうまく聞けない。
“弟”は続ける。

「母さん、それで、参っちゃったんだ。
 安心するどころか、きっと本当に、すごいショックだったんだ。
 母さんがオレのこと殴ったりするようになったのは、だって、それからなんだ。
 ……母さんは、悪くない。
 悪いのは全部、勝手に家出て、勝手に死んだっていうオレの“兄貴”だ。
 なぁ、母さん本当は、本当に優しい人なんだ。
 きっとショックから立ち直ったら、そのキッカケがあれば、
 また元の母さんに戻るから。大丈夫だから。
 それまで、オレがちゃんとついててやりたいんだよ」

だからここから出してくれ、母さんに会わせてくれと、今度は声を押さえることもなく“弟”は言う。
ピアスにつかみかかってくるその様子に、
今度こそ躊躇うことなく、コウが割って入って来た。
廊下にいるコウの部下たちも、騒ぎを聞きつけてやってくる。

引きはがされた“弟”は、部下たちに「落ち着きなさい」とおさえつけられている。
乱暴ではないけれど、わずかな身動きも許さない様子だ。
部下たちの会話から、そのうちの1人は医者を呼びに行っているらしいことがわかった。
引きはがしたピアスのほうは、コウが背に庇うようにしている。

「今日はもう、無理だよ」

コウがそう判断して、
ピアスは連れられるまま、病室を後にした。


***************


「悪かった」

帰り道、コウが言った。
何を謝っているのかは言われなくてもわかった。
けれどもちろんコウが悪いのではないし、そうかと言って“弟”が悪いわけでもない。

悪いのは、自分だろうか。……そう思いそうになるところを踏みとどまる。

「気はすんだか?」

うまく答えられなかった。
なんと答えていいのかわからない。なんと答えたいのかも。

“弟”の言っていたことを思い出す。
自分のことを、あんな風に。
覚えていないどころか、憎まれていた。
“死んだ”存在になってもなお。

ショックがなかったわけではない。
ただ、それでも、
だからこそ。


***************


家まで送ってくれると言ったコウとは、森の入り口で別れた。
時間はもう黄昏時で、
ピアスは灯りを持っていなかったから、コウには心配された。
けれどピアスには慣れた道だ。
たとえ月のない真っ暗闇の夜道でも、迷わず帰ることができるだろう。

「明日また、会いに行きたい。いいかな」

コウは黙って頷いた。

それからピアスは一週間ほど、毎日“弟”のもとへ通うことになる。




(to be continued...)


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comment

  1. 2011/12/13(火) 12:01:05 |
  2. URL |
  3. KalaKaLa
  4. [ 編集 ]
お邪魔しました。

Re: KalaKaLa さん

  1. 2011/12/13(火) 23:39:09 |
  2. URL |
  3. 花舞小枝の春
  4. [ 編集 ]
こんばんは~はじめまして!
おいでいただき、ありがとうございました。

またお時間あったら、ぜひいらしてくださ~い☆☆

コメントありがとうございました*^^*

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