『ヒッチハイク』『プール』 《22のラブレター》
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こんにちは、春です。
夕方は気持ちのいい季節ですね*^^*
空も綺麗です☆
今日は『ヒッチハイク』『プール』です。
断片というか、短編の長さに近づいて来ました……!
それでは《続きを読む》よりおすすみください☆
***************
『ヒッチハイク』
ヒッチハイクが趣味という知人たちに触発されて、初めてのチャレンジをしてみた。
「免許持ってるんだから自分で運転しなよ」
「オンナノコなのに、危ないよ」
そう言って2人をとめるのが私の役目だった。
2人が聞いてくれたことなんて、一度もなかったけれど。
免許なんて持ってないから、わたしは、いいのだ。
なんだか全部が面倒になってしまって、
帰りたい場所とか人とか、そういうものももういらないような気になってしまって、
だからオンナノコでも、いいのだ。
何がしたいわけでもない。
どこかに行きたいわけでもない。
ただ遠く、
名前も知らないような、
私にとってはどこでもないような、そんな場所に消えてしまいたかった。
私の帰るべき場所は、私を待つ人たちは、
いろんなしがらみの糸が絡まってこんがらがってしまっていて、
それをひとつひとつほどいていくのには
もう、疲れてしまった。
おろせるだけのお金と、少しだけの着替えとをリュックにつめて探した。
誰か、私を連れてって。
誰か。
誰か。
……けれど結局、私を乗せてくれる車は見つからなくて。
「意外と難しいんだよねー、コレが!」
笑顔で話していた友人の顔が浮かんだ。
もう照り返しもない夕暮れの中、なんだか力の抜けてしまった身体を引きずって
私は来た道を引き返した。
連れて行ってくれる人はいなかったけれど、
抜けてしまった力の分だけ、
糸の重みも消えてくれたような気がした。
***
『プール』
部活棟の屋上にあるプールサイドからは、
普段勉強している教室も、校庭も、体育棟も見渡せる。
教室では文化祭の実行委員たちがを作業しているのが見えるし、
校庭では野球部がグラウンドをならしているのが見えるし、
体育棟ではバスケ部とバレー部が後片付けをしているのが見える。
風が冷たくなって、
今はもう誰も泳いでいないプールの水面は、今は静かに揺らいでいる。
灼熱に焼かれる季節ももうすぐ終わって、
二つ上の先輩たちの夏が通り過ぎていく。
学年が違えば、当然授業も違う。
校舎も違う。
第一、三年生ともなれば、受験が近づくにつれて学校に来る機会自体が減るだろう。
「あれ、まだ着替えてなかったの?」
オレンジにピンクの花が咲くサンダルを手に、帰り支度を終えた先輩が
更衣室からの階段をあがって来た。
「風邪引いちゃうよー」と、たたんであった薄手のカーディガンを差し出してくれる。
身体はもう乾いてしまっているから、濡らしてしまう心配はないけれど。
「試合、来週だからね。ちゃんとしなきゃダメだよ?」
先輩には、最後の試合だ。
うなずいてから差し出されたカーディガンを押し返した。
気づいてみればたしかに、夕方の寒さに腕は鳥肌をたてていた。
「お疲れさまです」
「はいよー、またねー」
応える先輩を背にして、私も更衣室へと下がっていく。
話せる機会も、会える機会も、見かけることのできる機会も減るだろう。
先輩と一緒に参加できる来週の試合が待ち遠しかった。
けれどだから来週の試合は、できればまだ迎えたくなかった。
私がそう言ったら彼女は、どんな顔をしてしまうんだろう。
来週、先輩の夏が終わる。
来週、きっと私の夏も終わる。
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夕方は気持ちのいい季節ですね*^^*
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断片というか、短編の長さに近づいて来ました……!
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ヒッチハイクが趣味という知人たちに触発されて、初めてのチャレンジをしてみた。
「免許持ってるんだから自分で運転しなよ」
「オンナノコなのに、危ないよ」
そう言って2人をとめるのが私の役目だった。
2人が聞いてくれたことなんて、一度もなかったけれど。
免許なんて持ってないから、わたしは、いいのだ。
なんだか全部が面倒になってしまって、
帰りたい場所とか人とか、そういうものももういらないような気になってしまって、
だからオンナノコでも、いいのだ。
何がしたいわけでもない。
どこかに行きたいわけでもない。
ただ遠く、
名前も知らないような、
私にとってはどこでもないような、そんな場所に消えてしまいたかった。
私の帰るべき場所は、私を待つ人たちは、
いろんなしがらみの糸が絡まってこんがらがってしまっていて、
それをひとつひとつほどいていくのには
もう、疲れてしまった。
おろせるだけのお金と、少しだけの着替えとをリュックにつめて探した。
誰か、私を連れてって。
誰か。
誰か。
……けれど結局、私を乗せてくれる車は見つからなくて。
「意外と難しいんだよねー、コレが!」
笑顔で話していた友人の顔が浮かんだ。
もう照り返しもない夕暮れの中、なんだか力の抜けてしまった身体を引きずって
私は来た道を引き返した。
連れて行ってくれる人はいなかったけれど、
抜けてしまった力の分だけ、
糸の重みも消えてくれたような気がした。
***
『プール』
部活棟の屋上にあるプールサイドからは、
普段勉強している教室も、校庭も、体育棟も見渡せる。
教室では文化祭の実行委員たちがを作業しているのが見えるし、
校庭では野球部がグラウンドをならしているのが見えるし、
体育棟ではバスケ部とバレー部が後片付けをしているのが見える。
風が冷たくなって、
今はもう誰も泳いでいないプールの水面は、今は静かに揺らいでいる。
灼熱に焼かれる季節ももうすぐ終わって、
二つ上の先輩たちの夏が通り過ぎていく。
学年が違えば、当然授業も違う。
校舎も違う。
第一、三年生ともなれば、受験が近づくにつれて学校に来る機会自体が減るだろう。
「あれ、まだ着替えてなかったの?」
オレンジにピンクの花が咲くサンダルを手に、帰り支度を終えた先輩が
更衣室からの階段をあがって来た。
「風邪引いちゃうよー」と、たたんであった薄手のカーディガンを差し出してくれる。
身体はもう乾いてしまっているから、濡らしてしまう心配はないけれど。
「試合、来週だからね。ちゃんとしなきゃダメだよ?」
先輩には、最後の試合だ。
うなずいてから差し出されたカーディガンを押し返した。
気づいてみればたしかに、夕方の寒さに腕は鳥肌をたてていた。
「お疲れさまです」
「はいよー、またねー」
応える先輩を背にして、私も更衣室へと下がっていく。
話せる機会も、会える機会も、見かけることのできる機会も減るだろう。
先輩と一緒に参加できる来週の試合が待ち遠しかった。
けれどだから来週の試合は、できればまだ迎えたくなかった。
私がそう言ったら彼女は、どんな顔をしてしまうんだろう。
来週、先輩の夏が終わる。
来週、きっと私の夏も終わる。
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Re: 牡蠣ひろみ さま
- 2011/08/08(月) 22:51:49 |
- URL |
- 花舞小枝の春
- [ 編集 ]
> 『プール』、最後2行の終わり方が切なくて好きです。
ありがとうございます*^^*
あぁいう感じ、「あり」ですか?
高校時代は水泳部だったので、
プールの風景だけは、当時を思い出しながら書いていました^^;
甲子園ももちろん、
夏にも、いろいろなドラマがありますよねぇ*>v<*
コメントありがとうございました☆
Re: 星乃瑠璃 さま
- 2011/08/09(火) 23:28:39 |
- URL |
- 花舞小枝の春
- [ 編集 ]
ヒッチハイク。
私、単独ではしたことないんです~~~
昔友だちとやって、乗せてくれたおばちゃんに「オンナノコばっか危ないでしょ!」と
怒られたのは、思い出です^^;
> どこか遠くに逃げたかった女の子が、ヒッチハイクに失敗したことで大切なものを見つけたという感じでしょうか?
見つけた。かは微妙ですが、ちょっとクールダウンできた。みたいなイメージです*^^*
友人にはハイカーが多いので、
私もいつかやってみる。日がこないとも言えないかもしれません。
……たぶんできないです^^;
コメントありがとうございました☆