旅の空でいつか

ご訪問いただき、ありがとうございます
はじめましての方は、メニューの「はじめに。」や「作品一覧。」をご覧ください。
記事内容の無断転載は厳禁ですが、リンク&URLの転載はフリーです。ご一報いただけると嬉しいです☆
ブロとも申請は歓迎です☆
みなさま、どうぞ楽しんでいって下さいね*^^*

スポンサーサイト

  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

狼の娘_1 /Z

  1. 2010/03/05(金) 23:53:30|
  2. ★完結★ 『アルファベットの旅人』シリーズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
→続きの『狼の娘_2 /Z』はコチラです
※作品一覧はコチラです




ぼくがその女の子に出会ったのは、
夕闇の山の中。



***************



その日は本当ならば、どうにか明るいうちに
その先の村まで辿り着けるはずの予定だった。
山の夜には、危険が潜む。

夜の山には、いろいろなものが出る。
腹を空かせた獣。
金に飢えた盗人。
そんなものたちに会うのはまっぴらだった。

けれどぼくはこの日、
数日前から降り続く雨の中、雨宿りできる場所を見つけられず
降られながらの野宿が続いていたのがたたって、
すこしばかり、風邪をこじらせてしまっていた。

だから、見誤ったのだ。
その日のうちに越えられると思っていた山道は、
実際にはその半分にも到達することができなかった。
冷たい雨の降りしきる中、結局「今日はもうこれ以上進むのは無理だ」と判断できた時には、
もう、ひきかえすことさえできない闇の中だった。

生い茂る木々の中から、
特に立派なものを選ぶ。

今日は、この木のもとで夜を過ごさせてもらおう。



重たい身体を木の幹にあずけて、
ぼくは荷をおろす。
頭が重くて、少しだけめまいがした。
熱があるのか、瞼も重い。
視界がかすむ。

ここのところはあまり、目の調子もよくなかった。

左目の足りていないぼくの視力は、
本当ならば、もう随分前に光を失っていてもおかしくはなかった。


左目を失ったのは、おそらく今から9年前。
右目が今でも光をとらえられているのは、ひとえに、
都でぼくの帰りを待つ、あの優しい人たちのおかげだ。

栄養と、休養と、十分な薬剤治療と道具。
9年前から、いつも変わらず、ぼくに与え続けてくれた。

ぼくの右目には、うすい膜が入っている。
強すぎる光や、目には見えなくとも空気中に潜んでいる有害な物質から、
ぼくの右目を守る膜だ。
とにかく、できるだけ負担をかけないこと。

いつか光を失うことに違いはないけれど、
それまでの時を、少しでも先に延ばせるように。
せめてもの抵抗だ。


そんなことを考えていて、
それで、ふと気づく。

今日は、いつだ?

ぼくは指折り、日を数える。

あぁそうか。
今日から満月まで、あと数夜。

この数日は、降り続く雨のせいで、月の姿を見ていなかったから。
もしくは、体調がわるかったせいか。

気づかなかった。
大きな失態だ。


ぼくの身体は、月の満ち欠けに左右される。
満月の日を境にして、数日間。
軋むんだ。


胸も出ていない。
やわらかなラインも、それほどには目立たない。
ずっと護身術を習っていたから、筋力も程よくついて、
身長は170以上ある。

幼い頃に奪われた、ぼくの『命を紡ぐ』機能。
守り育むためのその機能は、
もうずいぶんと昔に失っている。
機能し始めることすらないままに。


見た目的にも、機能的にも、
ぼくはとうてい、「女」とは呼べない身体をしていた。

それでも、「女」として生まれ落ちたことに変わりはなく。
だからこうして、「歪み」がやってくる。

どうしようもなく「女」とは呼べない身体と、
「女」として生まれ落ちた身体。
日頃は共存しているその矛盾が、鈍い音をたてて、
軋む。


(あぁ、、、まずいな。)


身体が冷えて来ているのがわかった。
けれど、頭の中だけが熱い。
熱があるようだった。

発熱を自覚すると、その後は、まるで連鎖反応をおこしているみたいに
身体中が、異変を訴えだす。

喉が渇く。
関節が痛い。
目がかすむのは、熱のせいか、それとも。

身体から熱が逃げるのを避けようと、
ぼくはちいさく、身体をまるめる。

それでも、震えはとまらない。

もうじき、頭痛と腹痛と、ひどい目眩と吐き気とがやってくるはずだ。
身体がすでに、軋みはじめている。

重なった不調に、ぼくは危機感を覚える。
いつも左の腰に隠しさげている、愛用の短刀を胸に抱いておく。

今夜は、寝てはいけない。
きっといつものようには、とっさに反応ができないから。


 。

気づいたのは、
寝ずの夜明かしを決めた、まさに、ちょうどその時。

左後方の、おそらく、3つ後ろの茂みの奥。
なにか、ちいさな気配がある。

(……)

気配をさぐる。
身体は不調を訴える。
集中が切れそうになる。
けれど、それに負けているわけにはいかない。

読み間違いは、命を落とすことにつながる。
ぼくには、ぼくを待っている人がいるから、
だから、負けちゃいけないんだ。


気配はひとつ。
獣ではない。
人間だ。

人間。
やっかいだ。

盗人か。

人さらいか。


……その可能性に
古い記憶がうずいて、ぼくの呼吸を乱す。


「ソレ」はふとした瞬間に、
あるいは本当に突然に、やってくる。


何を思い出すわけでもない。
ただひたすらに、
暗く、重く、かき乱す。

叫びたくなるような重み。

引き裂かれるような歪み。

「ソレ」はぼくを飲み尽くし喰らい尽くし、
ぐちゃぐちゃに踏みつぶして嬲り散らして、
身体中にまとわりついて、離れない。


(ダメだ。今は……)

繰り返し訪れるソレを落ち着かせる術は、
幼い頃から少しずつ、あのやさしい人たちから教わっていた。
それでいつも落ち着くわけではなかったけれど、
縋る縁には成り得ていた。


ぼくはさらに警戒を強める。

(大丈夫。大丈夫。落ち着いて……。)

相手は一人。
短刀は胸の内。

そのへんのチンピラならば、相手にもならないくらいだ。
…普段なら。


気配がそっと、近づいてくる。

ぼくがここにいることには気づいている。
けれど、
ぼくがすでに気づいていることには、
どうやら相手は気づいていない。

茂みの奥から一歩一歩、
そっと足音を消して、近づいてくる。

暗く、重く、かき乱される痛み。
叫びたくなるような引き裂くような歪み。
飲み尽くし喰らい尽くし踏みつぶして嬲り散らしてまとわりついて……

(……大丈夫。)

痛みも震えも、とまらなくても。


残る茂みはあとひとつ。
ぼくは短刀を握りしめて、いつでも鞘から抜けるようにして、決める。

勝負は、一瞬。
相手が手をのばして来た瞬間に、切り付け、相手が驚いている隙に、
逃げるんだ。
今のこの身体で正面から戦って、勝てる可能性はそう高くはない。
じっとしているだけでも倒れそうなこの身体。

気配を探る。
闇が、近づいてくる。

あと、

4歩、

3歩、

2歩、


(__今!)


瞬間で鞘から抜きさって、振り返って短刀を流すように延ばす。
短刀が相手の延ばした手を切り裂く。

「ぁっ……!」

…はずだった。


刃が相手に触れる瞬間、流れをそらす。
いや、少し、かすったか。


目の前には、大きな目を見開いた少女の姿。

(違った……)

少女からは、敵意をかけらも感じない。

間違えたのだ。ぼくは。
そうだ最初から、敵意なんて感じられなかった。
ただ、ぼくが恐れていただけで。。。


「ごめん、ぼく、っ」

あわててそこまで話しかけたところで、
ぼくは、強烈な頭痛に顔をしかめる。
そしてやってきたのは。


闇。

「う、あ……」


闇が、ぬりつぶした。
痛みと、軋みと、歪みとともに。

何も見えない。
目が。
暗い。
闇の中だ。


ぐらん、と頭が揺れて、吐き気に襲われた。
割れるように、頭が痛む。
けれどそれをハッキリとは認識すらする前に、
ぼくは、意識を手放した。



(to be continued...)



→続きの『狼の娘_2 /Z』はコチラです
※作品一覧はコチラです

スポンサーサイト

<<狼の娘_2 /Z | BLOG TOP | ベンチと朝食 /Z>>

comment

  1. 2010/05/26(水) 23:26:14 |
  2. URL |
  3. 遠野秀一
  4. [ 編集 ]
こんばんは、遠野です。
全部にコメントをしたいんですが、
さすがに無理っぽですw

前に言った気がするんですが、
ちょいと前に投稿した作品の登場人物が
奴隷にされて左目抉られた少女なんですよ。

以前、春さんにやんちゃと言われたあの子w
(コメは音楽の民2)

Zの話を読むと、性格は全く違うのに
なんとなくウチの子と重なるんですよね。
まぁ、私事なんですがw

Re: タイトルなし

  1. 2010/05/27(木) 00:30:27 |
  2. URL |
  3. [ 編集 ]
> 遠野秀一さま

こんばんは!コメントありがとうございます*^^*
> 全部にコメントをしたいんですが
それはスゴイwww
私、がんばって24時間以内レスで対応します。
でも遠野秀一さんにはメリットないっすね^^;

> 以前、春さんにやんちゃと言われたあの子w
覚えていますよ~☆
読めないのか、会いたいのに!! と、思っていたので^^
もしどこかでお目にかかれる機会があったら、
ぜひぜひ、教えて下さい!!
あ、……続き(解答編)楽しみにしています。
ちなみに私の推理は中編のうちに砕かれました。犯人候補がお亡くなりに……。

コメント、ありがとうございました*^▽^*

 管理者にだけ表示を許可する
 


trackback


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。