旅の空でいつか

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ベンチと朝食 /Z

  1. 2010/03/05(金) 01:12:37|
  2. ★完結★ 『アルファベットの旅人』シリーズ
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カーテンをあけると、真っ青な空がひろがっていた。
雲はまっしろ。
鳥がないている。
風がふいて、芝生がしずかにゆれている。

ぽかぽかして、いいきもち。

すごく天気がよくて、
すごく気持ちがよかったから、
だからぼくはこの日、コーヒーを1杯だけ飲んですぐに、
その家を出ることにした。

昨日ぼくを泊めてくれたこのおうちの人たちは、
みんなみんな優しくて、
おみやげに、バターと砂糖をたっぷりつけた
トーストまで頂いてしまった。
すごくすごく、うれしい。
だからすこし名残惜しい気持ちになったけれど、
やっぱりぼくは、出発する。

こんな天気のいい日は、はやく、外にでたくてたまらない。


道はきれいに整えられていて、歩きやすい。
白い、小さな砂粒がしきつめられた道。
とおくの方は、キラキラして見える。
この白い砂粒が、太陽の光を反射して。

道の脇に並ぶ木々は、
青々として、力強い。
鳥の声がきこえる。
近くから、遠くから、きこえる小さな声。

側の家から、パンを焼くにおいがする。
あまくて、香ばしくて、いいにおい。

あぁ、朝ご飯も食べずに出てきてしまったから。
コーヒーじゃ、ごまかせないかな。
ちょっと、お腹がすいたみたい。


もう少し歩いたところに、公園がある。
昨日この町に来た時に見つけたんだ。

あの公園のベンチで朝ご飯食べたら、
きっときもちいいだろうな。
考えるだけで、嬉しくなる。


今日は、とってもいい天気。
ぼくの足は、公園に向かう。


公園の真ん中に、ひとつのベンチ。
そこに腰をおろしてぼくは、
さっきもらった包みをあける。

まだあたたかい。
とけたバターのいいにおいがして、
バターと一緒になったお砂糖がおいしそう。


ベンチには、お日さまの光。
今日は、すごく、いい天気。
ぽかぽか。
気持ちがいい。


ゆっくりとパンを食べていると、
目の前に、うす茶色の一匹の犬。
お腹がすいているみたい。
パンを一欠け差し出すと、くわえて、どこかへ行ってしまった。

後ろ姿に、揺れるしっぽが嬉しそう。
だからぼくも嬉しくなって、去っていくその犬を見送った。

今日は、本当にいい天気。


まだまだ残っているパンをまた、食べ始めると、
今度は目の前に、小さな兄弟。
黄色と緑。
おそろいの、けれど色違いの鞄を持って。
中には数冊の本が詰まっている。
これから学校に行くのかな。

小さい子のほうが、
ぐぅ。
と、お腹をならした。
お腹がすいているんだね。
ぼくは、残っているパンを半分、差し出した。
まだ口をつけていないほう。
2人で食べたら少ないけど、一緒に食べて。

ありがとう。
小さい子のほうが笑って言って、
大きい子のほうが、ぺこっ、と頭を下げた。
それから仲良く、歩いていく。
小さい黄色と、少しだけ大きい緑。
すごく仲がよさそう。

少し羨ましい。
でもそれ以上に、元気そうで、楽しそうで、
見ているだけで、嬉しくなる。

今日は、本当にいい天気。


もうあまり残っていないパンをかじるぼく。
公園にいるのは、今は、もうぼくひとりみたい。

お日さまがぽかぽかして、気持ち良い。
風が吹いて、木々を、草葉を、ぼくの髪を、ゆらしていく。
向こうのほうに小さく咲いている、ピンク色の花が綺麗。
青い青い、この広い空にはよく映える。
まっしろな雲がゆっくりと浮かんで、
よく見ると少しずつ、風にながされているのがわかる。


気持ちがよくて、そのままベンチに横になる。


少し離れたところから、
ゆるく巻いた、綺麗な長い髪をした女の人が声をかけてくれた。
桃の花の色の洋服を来ている。

__おはようございます。あの、大丈夫ですか?

ぼくは少しだけ身体をおこして、
笑って、軽く手を振る。
心配をかけてしまったみたい。

__すみません、大丈夫ですよ。


女の人は、軽く笑って会釈をして、そのまま歩いて行ってしまった。

ぼくはまた横になって、
それから、目をとじる。


……今日は、本当にいい天気。


浮かんでくる、お日さまの色。
広くて大きな、空の青。
わたの固まりみたいにうかぶ、雲の白。
枝葉の色。
それが風に揺れて、お日さまにキラキラ光る色。
あの犬の、薄茶色。
小さな黄色。
少し大きな緑色。
花のピンク。

あと、どれくらい。
ぼくは、この景色が見られるのかな。

桃の花の色。
ふわふわして、かわいらしい女の人だった。

ぼくももしかしたら、
あんな女の人みたいになれていたのかもしれない。
自分でも、イメージだってできないけれど。


風が吹いて、
かすかに、花のかおりをはこんでくる。

いいにおい。


今日は、とてもいい天気。
風が吹いて、
世界はこんなにも色鮮やかで、
すごくすごく、気持ちがいい。


だからすごく嬉しくて、
それから少し、悲しくなる。

あとどれくらい?
ぼくが、この世界の『色』を、『光』を、見ていられるのは。
ぼくにも、だれにも、わからない。

ぼくにできるのは、ただしっかりと、
この色鮮やかな世界を目に焼き付けておくことだけ。

すごくすごく気持ちのいいこんな日は、
遠い都でぼくを待つ、やさしい人たちのことを
特によく、思い出す。
やさしくて、あたたかい人たち。


__この町でも、けっきょく、なんの手がかりも手に入れることはできなくて。


こんなに空が広くて青い日は、
すごくすごく気持ちがいいから。

だから少しだけ、泣きたくなる。
偽物の瞳の入った左目は、少しの反応もしてくれないけれど。

でも、それでいい。
それでいいんだ。
泣きたくても、泣けなくても、
ぼくは、行くと決めたから。


このイロトリドリの世界を見られなくなる前に、
一目でも。



また風がふいて、ぼくの髪を
くすぐるように揺らしていく。

なんだか、また少し嬉しい気持ちになれたから、
ぼくは目をあける。


大丈夫。
まだ、大丈夫。


ベンチを立って、軽くほこりをはらう。
それから大きく、深呼吸して。

ぽっかぽっかのお日さまの下、
ぼくはまた、歩き出す。


向かうのは、お日さま色の道の向こう。



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