旅の空でいつか

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保護者・1 /リゾット

  1. 2011/06/24(金) 20:35:29|
  2. ★完結★ 『ハミングライフ』シリーズ
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※作品一覧はコチラです

お久しぶりです。春です。
『ハミングライフ』です。

めっきり、暑くなりましたね。
また明日辺りから(関東では)涼しい日も戻ってくるようですが。。。

続きますので、今回はレシピ(的ないつものアレ)は未記載です^^;

みなさま、夏バテ、していませんか?
どうぞバテにはお気をつけて……!

ではでは、《続きを読む》からすすんでやってくださいませ☆




***************


「まぁちゃん、げんきかなぁ。ちゃんとごはんたべてるかなぁ」

お絵描き中の“みぃ”が言った。
“まぁちゃん”は、”みぃ”の口から、このごろ頻繁に出てくる名前である。

その名前を随分と前に聞きつけた家主は、
「まぁちゃんて、”みぃ”の……ママ、の名前?」
と、たずねてみたことがある。
ママだから、”まぁちゃん”。ありそうなラインだった。
けれど”みぃ”は首をふった。
「じゃあ、パパとか、お父さんとか?」
家主はそう重ねて訊いてもみたのだけれど、それにも”みぃ”は首をふった。

”みぃ”の家族を捜す手がかりであることに間違いはなかったけれど、
ずいぶんと頼りない情報だと感じたことを、ピアスは覚えている。

「……”みぃ”、ちょっとその”まぁちゃん”の絵描いてみてよ」

ピアスが言う。
”みぃ”は少し考えて、「かけない」と言う。

「まぁちゃんは イケメン だから、みぃにはかけないの」
「……」

遠慮なく絵のモデルにされているピアスには、聞き捨てならないセリフだ。
むっとして黙り込むピアスを見て、奥で食器を片付けている家主が吹き出した。
気に入らない。

「……おい、自分だってモデルにされてんだからな。笑ってる場合じゃねぇんだからな!」

ピアスが言えば、家主は今度こそ、声をあげて笑った。
どう見繕っても「かなり綺麗な顔」の家主だから、ピアスはますます気に入らない。
(余裕見せやがって)と思う。

「まぁ、ほら、人間の魅力って外見じゃないから」
「説得力ねぇよ!」

とびきり綺麗な形の人間に言われても、なんの慰めにもならない。

「善し悪しだぞ? 外見よくたって、得することばっかじゃない」

まだ笑いながら、家主は言う。

「だから、あんたに言われても説得力ねぇんだって!」

これはウソだ。
得ばっかじゃない、には納得できる。
家主があまり目立つことを好まない性格なことは、ピアスにもわかっている。
隅っこで黙っていても目立つ外見では、今よりも若い頃はきっともっと、
それで苦労することもあっただろうな、ということくらいはピアスにも想像できる。

「あー、じゃあほら、アスミも外見には全然こだわらないって言ってたし」

「アレは外見に興味ない人間だろ」

ピアスも何度か会った事がある、家主の古くからの知人であるというその女性のことを思い出す。
詳しくは知らないけれど、教師をしているという視力のない人だ。
自分が詳しくないだけで、どうやらちょっと有名な人らしいことも知ってはいる。

文字やら数字やらを学ぶ際、教材を選ぶのに協力してくれた彼女は、
「暑いな……」
と言って、ためらいなく丸坊主になろうと、ハサミを手に取ったような人間だ。
「さすがにそれは」と、家主と周囲にいた人間が驚いて止めに入っていた。

家主の驚く顔なんてそうそう見られるものではなかったから、
それはそれで、イイモノを見られてよかったのだけれど。

「あんな極端な人のこと例に出されたって説得力ないんだって!」

そう言って抵抗するピアスの様子を、やはり、家主は笑って見ている。

「できた!」

”みぃ”が声を上げた。描いていた絵が完成したらしい。
何か黒い塊が2つと、黄色い塊がひとつ。

「ぴぃちゃんと、”のっぽ”と、ヒナちゃん!」

”みぃ”は得意気だ。

「あぁ、うん、そっか。 いや、うん、”みぃ”は絵が上手だなぁ」

へへへへ、と”みぃ”はテレて笑う。
その様子が可愛いから、ピアスは彼女には逆らえないのだ。

よしよし、と頭を撫でてやると、”みぃ”はさらに笑顔を深くした。
その様子はどうしても微笑ましくて、家主も笑顔になる。


******


「そうだピアス、夕方なる前に、”のっぽ”のこと迎えに行ってやってもらえるか?」

昼食時、家主が言った。

”のっぽ”はこの日、近くの町に食材の買い出しに行っていた。
足のつくのが早い時期なので、買ってくるものは乾物や焼きしめたものが多くて、
だから重量で言えば軽いものが多いのだが、そのぶん荷物はかさばるはずだった。
めんどくさそうな顔になるピアスだったけれど、
「みぃもいくーーー!」
と声があがったので、「よし、じゃあ一緒にお散歩しながら行こう」と、一転して意欲を見せた。
ピアスは、”みぃ”を溺愛しているのだ。

「あ、でも今日って、カリンとコウも来る日だろ? いいのか、おれいなくても?」

「報告書の受け取り」がカリンの来る理由だったけれど、
カリンは、何かと事情が複雑らしいヒナタの仕事ぶりを確認するという役目を持った、
言ってみれば「お目付役」だ。
「仕事ぶり」の成果に含まれるだろう自分たちがいなくていいのかと、ピアスは少し心配になる。

「暗くなる前に帰って来られればいいよ。
 それくらいの時間までなら、アイツら待たせとけばいいだけだし」

家主の期待は雑なものだったが、ふうん、とピアスは納得する。

「カリンとコウと、どっちも一緒に来るってめずらしいな。何かあんのか?」

カリンは定期的に、コウは折に触れてこの家を訪れていたし、
その時の会話から察するに、カリンとコウも十分な顔見知りらしい、
どちらかと言えば「友だち」に近いくらいには仲がいいらしいことはわかってはいたけれど、
2人が一緒にこの家に訪れたことは、まだ一度もなかった。
だから何か、2人同時に来て話すべきだとでもいうような重要な、特別な事情でもあるのではないか。
そう問いかけるけれど、家主は首をかしげた。

「そう言えばそうか、2人で来るのはめずらしいか。
 ……んー、まぁ、なんかそういう気分だったんじゃないか?」

そんなもの、なのだろうか。ピアスにはよくわからない。
わからないけれど、何か重大な「大人の話」があるのだとしても、
それは「大人」に任せていればいい。
そうも思うから、別にどうでもいい気にもなる。
それがたとえ、自分の身に関わる事なのだとしても。

「……」

自分がそんな風に考えていることが、今でも時々、不思議だと思う。
信じられないような気持ちになる。
自分に関わるかもしれないことの全てを
自分が把握して、自分でコントロールしていなくても「大丈夫」であること。
家主や、その周辺の「大人」にまかせていても大丈夫だろうと思えること。
もっと言えば、
たとえ大丈夫でなくても、
きっとそれは、彼らが最大限に手を尽くしてくれた後の結果なのだろうと信じられること。
だったらその時はその時で、その結果だけ自分が引き受けるハメになったとしても、
別にいい、と思えること。

そういう身の委ね方を、甘え方をピアスが学んだのは、
全てこの家をつくってからのことだ。

「どうかしたか?」

家主と”みぃ”が、黙り込んだピアスを覗き込んでいる。

「いや、なんでもない」

それが自分にとって、どれだけ信じられないようなことなのか、伝えたい気持ちにもなるけれど、
伝えるのに適切だと思える言葉を、ピアスはまだ持っていなかった。

だから言わないままで、食事を続けた。


******


「すみません、ちょっと遅くなりました」

ピアスと”みぃ”が出かけてしばらくして、カリンとコウがやってきた。
笑顔で2人を家にあげて、冷やしておいた飲み物を出してやる。
並んで座るカリンとコウに、向かい合うような位置で家主も席に着く。

「今は、彼女と、あとの2人は?」

カリンが尋ねる。

「今日は”のっぽ”には、買い出し頼んでおいたんだ。
 だから、彼を迎えに行ったピアスに、”みぃ”もついて行ってる」

家主は今日、ピアスにウソをついた。
何か特別なことがあるのかと、ピアスはたずねた。
家主は「苦しいかな」と思いつつも、そらっとぼけてみせた。

2人が揃ってここに来る理由を、数日前に受け取っていた手紙で、家主はすでに知っていた。
本当は、3人ともここにいてもよかった。

けれど”みぃ”には、少しタイミングを見計らって伝えたかったし、
ピアスは、ヨーが訪れて以来、少し静かになることが増えていたのが気になっていたのだ。
ふとした瞬間に、何か考え込んでいるのか思い出しているのか、そういった様子を見せることが多くなっていた。
だから”のっぽ”に事前に相談して、
この時間にはいったん、つまりこの「報告」を受ける段階ではいったん、
ピアスと”みぃ”には遠慮してもらうことにした。

「ヒナタ、ちょっと緊張してる?」

コウが尋ねた。
かつて自分の教師で、卒業後は何年か同期として仕事をして、
現場主義だと思っていたのにバックヤードでのキャリアを踏んで行くことを選んだ変わり者の友人に、
ヒナタは苦笑してみせる。

「まあ、少しな」

あぁ緊張されてたんですか、と
とりたてて表情を変えないくせに驚いたような言葉を紡ぐカリンにも、ヒナタは苦笑してみせる。
そんなとこ気づけるなんてやっぱり先輩たち仲いいですよね、と続いた言葉にはコウも苦笑した。

「カリンはずっと現場いたいんだろ。
 だったらもうちょっとこう、相対してる人間の感情をこう、思いやるというか想像するというか、
 少なくともしっかり観察するとか、そのへんの力つけたほうがいいな」

はぁ、とコウの言葉を受け取るカリンだけれど、
「いや、コウはオレの観察に慣れてるだけだから、気にしなくていいよ」
とヒナタはフォローしてやる。
コウが苦い表情になる。

仕事だどうだこうだという理由も何もなく、
コウは昔から、ヒナタの観察を趣味にしていたのだ。
そうして仕入れたネタでヒナタをからかうことを酒の肴にすらしているような人間だ。
「外部の人間からの見られ方を自分も体感してみるため」と、
髪の色まで金色に染めて見せたのだから徹底している。
今は「この方がモテる気がするから」とも言っているけれど。

「……わたしずっと思ってたんですけど、コウ先輩ヒナタ先輩にホレてんですか?」

「「いや、それはないわ」」

コウは、どちらかと問われるまでもなく、むしろ女性が大好きで大好きで、大好きなタイプの人間だ。
だから「この方がモテる気がするから」という染めた髪色の理由も、
半分強は真実だろうとヒナタは思っている。

「女好き」に限らず、強く色を好むタイプの人間がヒナタは苦手だったのだけれど、
コウのそれは、マナーと節操と、ひとりひとりに対する誠実さが突出していた。
だから嫌悪は感じない。
ある意味ものすごい能力だとすら思っていて、好ましくさえ感じている。
色的な意味で好意を向けられたとしても、敵意ではなく、ただ「それはムリ」と返すだけで
きっと彼との付き合いは続けて行くだろうな、と思えるほど。

その後も「そう言えばコウ先輩、最近職場に来たあの女性は……」などと会話が続くものだから、
なかなか本題には入れなかった。
コウは相変わらず、そっちの方面ではやややんちゃなようで、楽しそうで何よりだ。
3人が帰ってくる前に話はすませてしまいたいから、
本題にいつまでも入れないのは、少し困るけれど。

(あぁ、でも……)

2人と話しているうちに、少しずつ緊張がほぐれてきているのを、ヒナタは感じていた。
たぶん2人の前では、「家主」ではなく「ヒナタ」の立場でいられるからだろう。

できるだけ、完璧な「家主」でいたかった。3人の前では。
3人の前でも取り繕っているわけではなかったけれど、
この2人に見せるような表情や態度の全てを3人にも見せているかと言われれば、
その問いにはノーとしか言えない。

(そうか、おれが緊張するから今日は2人で来たのか)

そのことにヒナタは思い至る。
カリンかコウか、どちらかだけでも別によかった。
けれど2人で揃って来たのは、おそらく緊張している自分の気持ちを落ち着けてくれるためだ。

それにしても、カリンのぶっこみ方は少し、強引だったけれど。
まぁきっと本当に気になってたりしたのだろうなとも思うから、別に、いいのだけれど。

「……で、本題だけど」

2人がせっかく緊張をほぐしてくれたのだから、
本題への道筋は、ヒナタ自身がつけた。

「”みぃ”のこと」

言いながら、けれど家主はピアスのことも考えていた。
ピアスは、本当に、”みぃ”を溺愛している。
だから心配だったのだ。

(こいつらには、おれが心配させちゃったけど……)

少しだけ、バランスを崩したままでいるピアスのことを思いながら
家主は続けた。


「こないだ見つかったっていうその、”みぃ”の保護者。どんなヤツ?」


”みぃ”が描けない、と言った、
だから髪の色さえ想像できない、イケメン”まぁちゃん”。
”まぁちゃん”が見つかったのは、1週間ほど前のことだ。

2人に心配をかけている場合じゃないよな、と
家主は背筋を伸ばすようにする。


日暮れ前に帰ってくる3人の姿を思った。
ヒナタではなく、家主として。
少し過保護かもしれなかったけれど、この家にはたしかに、守りたいものがあるから。


カリンとコウの口が開くのを待ちながら、
もしかしたら、何かしらのターニングポイントになるかもしれない、と
うっすらと、家主は感じていた。



(to be continued...)



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